• 2023.08.22
  • 夏のベルレンガ諸島
今年も早々と行ってきました! ベルレンガ諸島!


波止場から見えるこの島メインのビーチ

うちから車で約1時間弱のペニーシュからベルレンガ行きの船が出ています。
自分達で船をハイヤーするのもありだが、普通に運行している船だと大体片道40分ほどかかり、朝に出港する便と昼頃に出るのとある。
普段から高波の海域なので、船は恐ろしく揺れる。ザッブーン、ジャバジャバ、波は激しく船にぶつかって、その力を見せつけるかのようだ。フワッと波の頂点を過ぎたと思えば、ストンっと下波に落ちる。後ろを振り向くと、過ぎた大波は船尾よりも遥か上に見えるのだ。
早めにペニーシェの波止場に行って、船が出るまでの時間を長蛇の列に並んだとしても、船の屋外席に座ることをお勧めする。船内の席は広々としていて良いのだが、舟壁に打ち付ける波を感じながら、40分間も揺れ続けるのは相当自信がない限り無理だと思う。そもそも、室内に入る前に黒いビニール袋を渡される。初めてそれをもらった際は、どういうことかと思ったが、15分ほど揺れ続けた頃、その袋の意味が理解できた。また、ベンチ横のゴミ箱のことも。

船旅はきついのだが、ベルレンガ諸島が大好きで夏になると行きたくてウズウズしてしまう。今年はNYから友達が遊びに来てくれたタイミングで一緒に行くことにした。
天気は快晴。波も非常に穏やかな日であったが、到着に1時間もかかった。早々と岸に渡り、私のお勧めポイントの要塞へ向かう。そこまでハイキングだ。
いつもは、唯一この島の滞在を許されている漁師たちの小屋が連なる場所から移動するのだが、今回は波止場に通じるビーチ経由で登っていくことにした。
岩場に足を踏み出すたびに、チョロチョロとトカゲが横切り、空には大量のカモメが飛び回っている。


上の方にある白い建物が、漁師用の建物。Bairro dos pescadores漁師地区と呼ばれている。
島には民泊はあるが、基本的、誰もこの島に住むことはできない。

ベルレンガ諸島は、地中海性気候と大西洋性気候の合流により、世界でもユニークな生態系が形成されている。1465年に国王ドン・アフォンソ5世の書簡に「海のベルレンガスでは、誰も狩に行かない」と記されて以来、この諸島は国内初の保護地区であり、30年以上に渡り自然保護地区として認定されています。また2011年には、ユネスコの生物圏保存地域に指定されました。
中でもこの諸島の象徴でもあるのが、上でカモメとして記したアイロという鳥であるが、上空にいるだけでなく、至るところにいる、いる、いる! トカゲも相当いるが、トカゲは鳴かないし小さいので、アイロほど気にならない。

15分ほど歩いたところで、崖の下の方に要塞が見えてくる。ここから要塞までは足場の悪いくだりになるのだが、ここまでの船旅と、波止場からの上り坂、威圧感あるアイロ横目に乾いた地面を歩き続けたこと全てを忘れさせてくれるほど価値あるものが先にある。
この風景だ。↓


先に見えるのが要塞。この階段を下り切ったところから、要塞へ続く橋がある。

初めて来た時は、ジブリ作品の「天空の城」を思い出し、思わずため息が出た。
岩場から要塞へと続く橋と、その周りの海の美しさが完璧なバランスで頭の中で枠に入った絵画となる。パーフェクトなのである。

今回は、遠浅で水深が浅かったので、いつもなら水面下にある岩場を渡って、アクセスの少ないビーチに出ることにした。岩の間にこぼれた重油のようなナマコを踏まないように、足を置く場を慎重に選び、途中深くなっているところで飛び込んでみたりした。大きな魚、3センチほどの魚、1センチにも満たない小魚どれもが、保護された地域に生息しているからだろうか、我々の存在に怯えない。それどころか、ゆっくりと向かってくるので、手でつかめそうなのだ。


左に見えるピンク色の小石のビーチに向かった。

ポルトガルの海は冷たくて、普段は泳がない私でも、ここでは人魚になったつもりで常に水に触れていた。普段は刺すような海水だが、ここでは魔力を持ったものに感じられる。


要塞へ続く橋の下でも泳ぎました。

潮がだんだん満ちてきて、気づいたら、我々をビーチへ辿り着かせてくれた岩岩が見えなくなっていた。腰まで届く海水の中を歩いて帰路の岩場まで行き、波止場まで、来た時と同じルートを戻ることにした。

帰りの海は、今まで一度も経験したことがないほど波のない、平たい水平線であった。危険がないので、船乗りのおっちゃんたちが舳先に座ることを許してくれた。船首が切る風を、誰よりも先に受け止めながらペニーシュまで戻った。

夏の間にもう一度行けるだろうか。自分だけのとっておきご褒美にしておきたい、秘密の園的な存在。ベルレンガ諸島の美しさをみんなとシェアしたい反面、誰にも教えたくないような衝動にも駆られるのだ。
次行った時は、別の穴場を見つけてみよう。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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