
Global Peace Index 2025
私自身、2000年頃にポルトガルに移り住んで以来、この国の治安が大きく改善されたことを肌で感じてきた。ポルトガル人は、もともと温厚な気質で、命の危険を覚えることはなかったが、当時は移民街に足を踏み入れると明らかに空気が違った。駐車場へ通じる狭い階段の踊り場で、ヘロインを打つ若者を目にしたり、広場や道で無気力に寝転がる人々を見かけたりしたものだ。そうした地域では盗みも多かったらしい。
その後、ポルトガル政府は本格的に治安強化政策に乗り出し、警察の巡回を増やし、公共空間の監視を強化した。特にリスボンでは、「Segurança em Lisboa(リスボン治安強化計画)」の一環で都市部の治安改善を進められた。都市再生政策も法的にしっかりと制度化され、公園や広場は「家族や観光客が安心して利用できる空間」に生まれ変わった。
こうした政策は現在も継続的に推進されており、町で変な人に気づいた時には、警官が近くで見張っているのを確認できる。公園などでは照明が増え、子供たちの新しい遊び場も整えられ、歩道や自転車道(電動スクーター)も広がっていった。

Quick Silver スケートパーク・エリセイラ

エクストリームスポーツパーク・カスカイス
かつてモンサント公園周辺やリスボンの街路に立っていた娼婦の姿も、今では見られなくなった。娼婦が出入りしていたバーは、名残をとどめつつ、観光客に人気のカフェバーに姿を変えた。そしてその下にある、売春宿やバーが立ち並ぶ「危ない通り」と呼ばれていたRua Nova do Carvalhoは、路面を大胆にショッキングピンクに塗り替えられ、今では「Pink Street(ピンク通り)」として世界的に知られるトレンディで安全なナイトスポットへイメージ転換した。

Rua Nova do Carvalho – 通称Pink Street
この通りの近くに行くと、性風俗に従事する人々に対する支援政策に携わっていた友人の活動を思い出す。心理カウンセラーの彼は、夜な夜なモンサント公園を車で巡り、娼婦を見つけては保護し、カウンセリングをして更生を支えた。大きな野外コンサートやフェスティバルでは、仲間とともに観客にコンドームを配った。地味だが確かなこうした取り組みが、街の表情を変えてきたのだと思う。
こうして、ポルトガルの公共空間は、平和的な社会開発と国内治安への継続的な投資、そして人々の努力によって、大きく改善した。それはランキングの数字以上に、日々の暮らしの中で感じられる安心感へと通じている。
ちなみに日本は、昨年より順位を4つ上げて12位に入っている。2025年のGPIの最下位はロシア、次いでウクライナ。こうした数字を眺めながら、私は、安全とは、社会の選択と積み重ねの結果だが、紛争の絶えない今の世の中では、それがいとも簡単に崩れ去ってしまう可能性も秘めている、と改めて思うのだ。