• 2025.11.21
  • 恐竜の眠る大地 ロリニャー
ポルトガルは、ヨーロッパでも有数の「恐竜化石の宝」として知られており、特にジュラ紀後期(約1億5千万年前)の地層が良好に保存されており、陸・水・空あらゆる生物が共存、恐竜や他の古生物の多様な生物系があったことが分かっている。
その多くがリスボン北部のLourinhã(ロリニャー)という地域に集中しているのだが、以前この場所にある博物館で聞いた話によると、ロリニャーは、河川や湿地、浅い内海が入り組んだ環境が広がる、窪みになった河口地域で、嵐や洪水などの急激な自然現象によって、他地域に(他のヨーロッパ諸国からも)の恐竜や古生物が流れ着き、またそこで死んだ生物含め、短時間で泥に覆われたからだそうです。そのため、生物が埋没するスピードが非常に早く、化石として保存される確率が高かったのだそうだ。

ロリニャーで発見された代表的な恐竜リスト。

他、卵化石や赤ちゃん化石の発見でも世界的に有名で、最大100個の卵を含む巣が発見されたこともあり、赤ちゃん化石では、恐竜の成長過程や発育の進化的変化が研究されているそうです。
また、恐竜以外にも様々な古生物が発見されています。

今年に入って注意していただけでも、いくつかの新発見ニュースを目にしました。
4月2日:イグアナドン類の草食恐竜。この新種は、草食で二足歩行のイグアノドン類に属し、「Cariocecus bocagei(カリオケクス・ボカゲイ)」と命名。草食で二足歩行。頬骨と上額骨が癒合している。これは、咀嚼機能を強化するための適応であった可能性がある。(国際学術誌 ”Journal of Systematic Palaeontology”)
5月19日:約1億年前に地上を歩いていたとされる、奇妙な歯を持つジュラ紀後期の新種哺乳類が発見。この新種は「Cambelodon torreensis(カンベロドン・トレエンシス)」と命名。体の大きさはリス程度、四足歩行。奇妙な歯により、草食も肉食にも対応できる雑食性と考えられています。
3月16日:恐竜ではないが、約1億5千万年前(ジュラ紀後期)にポルトガルに生息していた新種の原始的な爬虫類が特定。この新種は「Marmoretta drescherae(マルモレッタ・ドレッシュラエ)」と命名。

恐竜が少なからず、人々の興味を惹くのはなぜなのだろう。遥か大昔に存在していた生物に対する好奇心を胸に発掘作業や研究を続ける研究者たちには夢があり、ロマンを感じる仕事だと思う。
男の子がいる家庭では、恐竜関係は身近な存在だ。事実、ヨーロッパ最大の肉食恐竜の化石を発見したOctávio Mateus(オクタヴィオ・マテウス)は、当時9歳だった。その後、発掘と研究を続け、今日ではヨーロッパ有数の恐竜専門家にまで登り詰め、発見が人生を変えるエピソードになっている。
私も息子と海やハイキングに行く際は、化石が落ちていないか意識している。この夏は、恐竜が発見されたPorto Dinheiro(ポルト・ディニェイロ)海岸に行ってみた。どこをどう探して良いのか検討もつかないが、しばらく岩や石を見続けていると、目が慣れてきて、それとないものが目につくようになる。私と息子は、暑い中、海水浴を楽しんでいる人たちを他所に、夢中で探していた。石に埋まった化石らしきものは、取り出すことはできないので、写真に収めるにとどまったが、それでも十分な充実感はあった。 こんなにも化石が発掘されるのだから、この先も暇があったら続けてみたいと思った。


息子がちょうど9歳になったとき、同年齢で恐竜の歯の化石を発見したOctávio Mateus少年の話をしてあげた。そうすると息子は、「僕は、見つけたらそっとポケットの中に隠しておいてもいい?」と言ったのが懐かしい。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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