• 2017.08.15
  • スコットランドの国花「アザミ」
イングランドはバラ、ウェールズならスイセン、アイルランドはクローバー、ではスコットランドの花と言えば…それはアザミです。
スコットランド人は、この慎ましやかな野の花以上にスコットランドにふさわしいシンボルはないと思っています。しかし、この花がスコットランド国家の勲章となるまでにはどんないきさつがあったのでしょう?

スコットランドの象徴としてアザミが初めて銀貨のモチーフとなったのは、1400年代、ジェームズ三世の時代でした。

170808PatrickS
謎に満ちた起源


実を言えば、ピンクや紫のアザミがどうしてここまで重要視されるようになったのか、確かな理由は誰にもわかっていません。一説によると、眠りについたスコットランド兵たちがノルウェー軍の侵入を阻止できたのは、敵軍の中に棘だらけのこの植物を踏んだ痛みに思わず大声で叫び出した兵士がいたおかげだと言われています。
その悲痛な叫び声を聞いて眠りから目を覚ました戦士たちが侵略軍を撃退したことから、アザミは勝利の花として称えられ、この国の象徴となったわけです。

もちろんこの話を裏付けるような証拠は何もないのですが、とても魅力的なエピソードなのは間違いありません。
ひと口にアザミと言ってもいろんな品種がありますが、それを知っている人は多くいません。スコットランドには地域固有のものや外来のものを含めて数種類のアザミがありますが、スコットランドを象徴するアザミがどれなのか、断言できる人はいないのです。ひょっとして「レッドカーディオ」でしょうか? いやいや、「マリアアザミ」なのでは? それとも「ゴロツキアザミ」かも?
さあ、どれが答えなのでしょう。答えは誰にもわかりませんが、そこは大して重要ではないのです。この花は、存在自体が純粋な詩なのですから。

ロバート・バーンズが残したロマンティックな愛の賛歌だけでなく、文学史において屈指の名作とされる美しい詩の中にも、アザミの花がインスピレーションの源となった作品があります。意識の大きな流れに対して(その場合、詩人はあらゆる物事を回想するのだが)、しいては宇宙の神秘に対しても影響を与えて、花の香りがウイスキーと見事に調和しています。

アザミは500年以上もの間、スコットランドの紋章学で重要なシンボルとされてきました。国家から個人に与えられる最高の栄誉の象徴の一つでもあります。1687年、ジェームズ三世が制定した「シッスル勲章」は、スコットランド王国ならびに英国に対して多大な貢献を果たした人物に授与される、重みのあるナイト(騎士)の称号です。この称号を授与する決定権を持つのは女王陛下ただ一人で、重要人物に与えられる勲章にはもう一つ、「ガーター勲章」のハット(帽子)があるだけです。

この地でアザミを見ることができるのは、庭園や公園、田舎だけとは限りません。よくよく目を凝らして探してみれば、世界的ラグビーチームや地元サッカーチームのシャツから、トップクラスの組織や企業のロゴ、なんと警察官の制服にまで、アザミの紋章はスコットランド中に溢れています。スコットランドの製品やお土産にも、人気のモチーフとしてよく使われています。

スコットランドの国のシンボルである、紫の花と酸味のある葉を持つこの慎ましげな姿の植物は、特にハイランド地方では広範にわたり群生しています。花言葉によると、古代ケルト世界では、アザミは人柄と生まれの高貴さの象徴でもあるのです。
アザミで見るべきものは、花だけではありません。独特の個性を持つ野菜でもあるアザミは、肝臓に良く体内を浄化するのに役立ちますが、その下準備には時間がかかります。他の野菜と違って、寒冷な気候が成長の絶対条件であるアザミは、その寒さを乗り越えると柔らかくなってきます。アーティチョークに似た風味を持つため、アザミは別名ワイルドアーティチョークとも呼ばれます。全体的に緑がかっていて、明るめの、あるいは白っぽい色の茎の多年草で、中には棘を持つものもあり、丈は最大で2メートルまで成長します。

野生のものはエキスやハーブティーにも使われるアザミは、体内浄化作用があることでも知られています。体内に蓄積した毒素の排出に有効な成分と言われるシリビニンを含み、特に肝機能を活性化してくれるのです。

また繊維質がきわめて豊富なため、便秘薬としても使われます。無機塩のビタミン群の他、若々しい体を保つのに役立つ抗酸化物質も含まれています。



特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 年齢酉年(とり)
  • 性別
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

パトリック・ サッコの記事一覧を見る

最新記事

おすすめ記事

リポーター

最新記事

おすすめ記事

PAGE TOP