バグパイプの音色や戦いの雄叫びが鳴り響くエディンバラのミリタリー・パレードは、並ぶものがない、ある種の芸術です。ロイヤル・ミリタリー・タトゥー・パレードに出演する軍楽隊は、実際に、伝統音楽やダンス、多種多様な軍隊式行進を、観客のための純粋な娯楽として夜ごと披露します。振付や照明、色彩、リズム、全体のコーディネートなどはすべて、パレードのパフォーマンスを盛り上げるのに欠かせない要素です。イギリス陸軍に加えてイギリス連邦各国、近年ではその他の国々の軍隊もパフォーマンスを行います。この類のイベントの中では、ロイヤル・ミリタリー・タトゥーは世界に名だたる一大行事なのです。
このフェスティバルの名前の由来は、第一次世界大戦中のエピソード。イギリス陸軍がオランダに駐留していた時、夜の終わりを兵士らに告げるオランダ陸軍のドラム音が聞こえていました。この夜の行進は“ドー・デン・タップ・トゥ”と呼ばれるもので、オランダ語で「酒樽の栓を閉める」を意味する表現です。
この行進は実のところ、兵士たちへのビールの提供を終えよという地域住民に対するサインでした。これを合図として各自しかるべき時間に帰宅し、翌日の戦闘に備えよという意味を持っていたのです。イギリス陸軍はそれ以来、楽隊の行進によって兵士たちの夜の終了を告げる習慣を取り入れました。その後、タップ・トゥを経てタトゥーという語が、陸軍の楽隊によって演奏が行われる儀式を指すようになったのです。現在知られているように、この祝祭は1949年、エディンバラのガーデンズ・オブ・プリンセス・ストリートで第一回目が開催され、その次の年にはもう一般公開されて6千人の見物客を集めました。
1950年代からミリタリー・タトゥーが行われているエディンバラ城には、8,600という収容人数を誇る屋外観覧席があります。この印象的な建築は、組立てと解体にそれぞれ1ヶ月を要しますが、その効果は絶大です。8月の期間中は約20万人の観客を収容し、およそ25ものショーが上演されるのですから。
2010年、エディンバラ・ミリタリー・タトゥーはロイヤル・ミリタリー・エディンバラ・タトゥーという名称に変わりました。世界的にも屈指の人気と存在感を持つ軍楽隊であることに加え、60周年の節目を迎えたこのフェスティバルがイギリス軍に名声と栄誉をもたらしたとして、エリザベス2世による「本物」の承認が与えられたのです。
また、ジャマイカのダンサー、アメリカン・パトリオット、カナダのミュージシャンなど、世界各国から非軍事的なパフォーマンスの演者たちも集まります。閉会式に花火や大砲の最終発砲が上がる瞬間は、華々しい見せ場となっています。
スコットランドを含む世界中で、約1億人がこの国際的イベントを毎年欠かさずチェックしているのだとか。最大の山場となる夜のショーの模様は、BBCチャンネルのライブ中継により、30カ国でオンエアされています。スコットランド人はこのイベントに毎年足を運び、中にはこのフェスティバルに行った証に、レアな記念品を確保するという人も少なくありません。
「ハウス(場内)」の中で最も良い席であるお城の中の観覧席は、まさに極めつけのプレミアものと言えます。