何年か前、スコットランドのアート団体による「Art for all(アートをすべての人のために)」というムーブメントがありました。それをきっかけとして、アートをすべての人に開放し、すべての人がアートを支えられるようにと、多くの美術館が入場無料になったのです。
美術館は、イギリス屈指の名建築家、ウィリアム・ヘンリー・プレイフェアが設計したネオクラシカル様式の建物の中にあります。
イングリッシュスタイルの大庭園と迷路に囲まれるような形で2つのギャラリーが建っていますが、国立美術館の中央ホールがある丘の周りには広々とした芝生が広がり、目の前にある人工池に姿を映すように、大きなエントランスが見えます。
アルバート王子が1850年に建てようとした宮殿は、完成までにその後の数年を要し、ようやくその姿が一般公開に至ったのは1889年のことでした。時間の経過に伴い、美術館は数回に及ぶ内外装の修復工事や、芸術作品の展示スペース拡張作業などが行なわれたのです。
スコットランド国立美術館では、スコットランドを始め世界各国の芸術家による膨大な作品、特別企画展、文化史上の出来事の資料や、1,000点以上の絵画や約200点の彫刻、インスタレーション、写真、版画など計3,300点もの作品を見ることができます。展示センターは、市の中心部に仲良く並んで建つ3つの建物にあります。スコットランド国立美術館の広々とした廊下を進んでいくと、ルネサンスや19世紀後半の傑作群、ゴッホ、モネ、セザンヌ、ルーベンス、ゴーギャンをはじめとする高名な画家たちの名画が次々に現れます。
スコットランド国立美術館は、スコットランド国立美術館、スコットランド国立肖像画美術館、スコットランド国立近代美術館の3つの美術館で構成されています。また、ベリックにあるパクストンハウス、バンフにあるダフハウスという2つのギャラリーともパートナー関係にあります。スコットランド国立美術館の常設コレクションでは、初期ルネサンスからスコットランド出身の天才画家による肖像画まで、あるいは16世紀から現代までを網羅し、スコットランド美術や近現代アートのコレクション、シュルレアリストや抽象画のコレクションまでが幅広く揃います。
スコットランド国立美術館で鑑賞できる数々の作品の中でも、レオナルド・ダ・ヴィンチの『糸車の聖母』やラファエルの『椰子の木のある聖家族』などは特に必見の名画です。
1階では特別企画展が行なわれます。2階に上がると、20世紀初期のロシアおよびフランス絵画、近代イギリス絵画や表現主義の作品、スコットランド近代絵画、そしてキュビズムの作品がいくつか展示されています。
最上階、美術館の中でも最も近代的なウィングの展示の中で特に重要なのは、マチス、ピカソ、アンディー・ウォーホールらの作品群でしょう。またディーン・ギャラリー(モダン・アート・ツーの旧称)には、シュルレアリストやダダイストの美術作品のコレクションが収められています。
スコットランド国立近代美術館について、本流からかけ離れた近代・現代アートの愛好家向けの内容だと決めつける人も多いのですが、私の意見はこれとは違います。この美術館を訪れた時、庭園や屋外展示の彫刻も素晴らしかったけれど、コレクションを見て大いに楽しめたからです。私はアート通でも何でもありませんが、ここの展示は誰もがアートを鑑賞し、作品からインスピレーションを感じ取れるよう、うまく工夫されていると思います。
展示された作品の一部には、その芸術作品に関する情報とともに、見学者に対する質問が添えられています。それを見た人は、作品について自分なりに調べ、自分なりの解釈や意味を引き出すこともできるのです。
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