• 2019.07.31
  • 木工職人技術、イヌイットとユピックのアート
カナダの職人技術は元来、木を原料としています。
ほとんどのお土産屋さんでさまざまなタイプの木工製品を目にすると思いますが、大抵は小さな動物の彫刻か、お決まりのカエデの葉をデザインしたもの、あるいはカナダで訪れた名所を表すその他の定番土産でしょう。こういうお土産はちょっと安っぽい感じがするので、とりたてて好きなわけでもお勧めしたいわけでもありませんが、多くの人に好まれますし、家に飾るにしろ、プレゼントとするにしろ、プラスチックでできた中国製のお土産よりはマシなはずです!
でも、カナダの木工職人技術と言えば他にもご紹介したいお土産があります。特にオタワ周辺やその他の比較的大きな都市のマーケットや露店では、確かな技術を持つアーティストにめぐり会うことが多く、大きな木片を削って驚くほど優美な工芸品を作り上げています。
中には薄い天板に施した彫刻がまるで木製の「絵画」のように見えるテーブルもあって、クラシックな写実的風景からカナダの慣習に関する面白い文まで、あらゆるテーマのものを見かけました。同じものはなく、それぞれ違いがあるので、真にオリジナルで手作りの上質なものを探している人にはぴったりの商品です。
アートの専門家以外では、カナダで質の高いハードストーン製品が買えることを知っている人はいないだろうと思います。 それがイヌイットのアート作品です。
先住民イヌイットが住んでいるカナダの北極圏は、過酷な気候環境で天然資源もごく限られています。彼らにとって彫刻はお金を稼ぐ手段のひとつなので、とても高い値段が付けられている場合もありますが、正真正銘オリジナルの地域特産品です。
イヌイットは木彫りの製品を作ることもあり、そのほとんどは家具や楽器など大型なものですが、伝統的なカナダのウッドクラフトセンターで買えるような製品もあります。ケベック地方を訪れた場合は特に、数あるアンティークショップをちょっとのぞいてみると、アンティークもの(またはビンテージもの)のイヌイットの絵画や家具、アート作品を手頃な値段で手に入れることができます。
イヌイットのアートは20世紀半ばまで認識されていませんでした。何世紀にもわたり、木、石、骨の彫刻芸術の名人を育んできましたが、アートの取引が可能になり、カナダのお土産として売られるようになったのは20世紀からなのです。イヌイットはもともと、宗教的な慣習と儀式のために小さな彫像や奉納用の作品を制作していました。
そして19世紀はじめに、こうした作品を塩や武器と交換し始めるようになりました。
現在のイヌイットのアートは基本的にステアタイト(別名「ソープストーン」)製です。小さな彫像は大抵、動物を形作ったものですが、グレートノース(イヌイットは自分たちの居住地をこう呼ぶ)の地元男性を彫ったものもあります。カリブーをモチーフにした作品も多く、木や石の彫刻のほか、刺繍製品(特に女性)も作られています。
数十年前までのイヌイットはまさに百年前か千年前のような暮らし、つまり狩りや漁で生計を立て、余剰分がなかったので全て家族と分け合い、コミュニティの生活にとって機能的なものしか持たない生活をしていましたが、今では一変しています。
それほど豊かでない土地で食べ物を見つけ生き延びることができたのは、熟練の職人たちが海へ出るためのカヤックや、氷の上を移動するためのソリの作り方を知っていたおかげです。現在のイヌイットは伝統を守るための芸術団体を設立し、この組織には現地の言葉で「思考、すなわち関心を持っている状態」を意味する名前が付けられています。
これはカナダ初のイヌイット運営組織で、イヌイットの文化と言葉を守り、イヌイットのストーリーを世界中のさまざまな人々に広めるために90年代に設立されました。この組織はイヌイットが制作したお土産の真正性の管理・認証も行っています。

さらにアラスカに近い地域には、やはり職人技術で有名なユピックという他の部族も住んでいます。
ユピックの職人技術はとりわけ19世紀に重宝されました。というのも、金属や石、骨の扱い方に精通し、銛、槍、ナイフなどの狩猟用武器を作るための高度な技術に加え、たとえ水中に転覆しても体が濡れることのないカヤックの作り方も知っていたからです。
今はもう、昔ながらの生活をしているユピックはほとんどいませんが、骨や木、石を用いた家庭用品やお土産を後継者が変わることなく作り続けています。


カナダのお土産



博物館でのイヌイットのアート作品展示

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

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