こちらカナダでは、生活にかかるコストは年々上昇していますが、給与は上がっていません。
友人や知人たちの間だけでなく、テレビのトークショーでもこういった状況に懸念を示す人が増えてきています。
日に日に進むインフレや生活コストの上昇(特にケベック州とここオンタリオ州で)に加え、(おそらくは)新型コロナウイルスのパンデミックの際に政府が医療体制を維持するために必要とされた経費をまかなうため、そして今もなお直面している失業者への給付金支給のために、次々と新たな税が課されています。
カナダのどの都市に暮らすかによって給与水準が大きく変わることは確かです。雇用者が所在地の都市にかかるコストを補填してくれるため、給与は居住地に応じた額となりますが、それでも近頃では、給与だけでは十分な生活を送ることができないところもあります。
国民皆保険制度や社会的に進歩した政府を擁し、スキーヤーや登山家、写真家、そして都会を愛する人たちにとって理想的な景観を有する世界有数の優しい国として、ほんの数年前までカナダは「約束の地」だと思われていました。
世界中のこれほど多くの人たちがカナダへ移住することを考え、私も含めたくさんの人が実際に移住したのはなぜなのか、その理由を推測するのは決して難しいことではありません。
しかし、新たな状況の中で自分の財政状況を見つめ直し、できることなら節約に努めることが今まで以上にとても重要になってきています。
隣国の「同胞」アメリカ人のように、カナダ人はどこへ行くにも車を使う傾向がありますが、通勤手段として自転車を利用する人も増えてきています。ハリファックス、バンクーバー、ケベック市といった都市の近郊では自転車通勤をする人の割合がとても高くなっています。とはいっても、厳しい冬の間はこの数字は大きく下がります。
依然として車が主流ではあるものの、大都市に住む人たちはバスや電車といった公共交通機関もよく利用します。カナダの国土は非常に広大で、特に海岸から海岸へと国を横断する時など長時間の移動には車や電車は不向きなので、空路での移動も広く利用されていることもお伝えしておきましょう。
残念なことに、ここ何ヶ月かで公共交通機関の利用料金は大幅に値上がりしたので(おそらく乗車率を減らす必要があったからでしょう)、友人の多くはバスの定期代を工面するのに悪戦苦闘しています。
私は車で通勤していますが、ダウンタウンで働く人にとって車通勤は現実的ではないということも認めざるを得ません。ダウンタウンエリアの駐車場やガレージは馬鹿みたいに高いし、駐車スペースを確保するためにキャンセル待ちをしなくてはいけないことも度々あるからです。
明るいポジティブな話もしておきましょう。この国では生活の質が素晴らしく高いため、退職後にカナダへの移住を選択する人たちがいることも事実です。
カナダには二つの異なるタイプから成る、魅力的な公的年金制度があります。一つ目は基本的ニーズを満たすことを目的とし、税金を財源とする「老齢保障制度」で、カナダ国民と、カナダに10年以上居住し働いた実績がある在留者のみが受け取ることができます。二つ目は、企業から拠出される保険料(労働者と雇用者双方が負担)を財源とする「カナダ年金制度」で、収入の4分の1を受け取ることができます。これらの年金に企業の私的年金制度や個人の貯蓄を上乗せすることも可能です。
50歳を超えてから海外で仕事を見つけるのはたいていとても難しいものですが、カナダは高齢の労働者にとっても素晴らしい機会を提供しています(正確に言うと、カナダの力強い経済活動と、国内で行われている専門的な知識や熟練したスキルを持つ人材に向けた招致事業のおかげです)。カナダで就業すると年金制度に加入することも可能ですし、退職を迎えた後は、実に高い生活水準が得られ、必要な際にはすぐれた医療制度を利用することもできるのです。
- 2021.06.28
- 生活コストと年金制度