• 2018.01.19
  • 10歳で将来の分かれ道?!ドイツの教育システム
ドイツの教育制度は、6歳で入学して10歳までの4年間が基礎学校「Grundschuleグルンドシューレ」という小学校。そして、10歳(5年生)という幼さで将来の進路を選ばなくてはなりません(下図を参照)。ここでほぼ将来の分かれ道が決まってしまう「エリートコース、就職コース、専門職コース」を選択せざるをえない岐路に立たされます。
日本のように真面目に学校に通っていれば15歳(中学生)までの義務教育はもちろんのこと、ほぼ留年せずに高等学校まで進学できるとは限りません。


まず、第一人気は大学に進学するためのアビトゥーアがとれる8年制エリートコースの「ギムナジウム」。日本人の間では、カトリック系の躾の厳しい小学校に4年間入れて、このギムナジウムに進学させるのが理想とされています。しかし現実は厳しく、4年生の通信簿が5段階のうち、オール1or2以上でないと入学するのが難しい上、万が一合格しても授業についていけなければ、留年やランクを下げた学校への移動という「ふるい」にかけられます。ストレートに卒業できるのが6〜7割程度。いかに優等生組でないと生き残れないプレッシャーをかけられるかが分かります。

次に人気なのが、1年〜13年生まで一貫校である総合学校「ゲザムトシューレGesamtschule」。ここで優等生であれば大学入学条件のアビトゥーアがとれるので、とりあえず進路がまだ決まらない人はこの学校を選びます。

そして勉強が苦手でも、事務職やマイスターなどの専門職を目指したい人は「レアルシューレ Realschule」に通います。将来は専門大学で自分の進む道を極めることができます。

日本の中学校にあたる5年制の「ハウプトシューレHauptsschule」。昔は職人さんを目指す学校だったようですが、最近ではグローバル化による外国語生徒や移民への学校へと移行してきているようです。


こんな10歳までに自分の進路が決まってしまうドイツの教育システムに疑問をもつ親も多く、最近人気があるのが13年制シュタイナー学校です。私も冒険して今年より娘をシュタイナー学校に通わすことにしました。

シュタイナー教育とは、20世紀の初めオーストリアの哲学者・神秘思想家ルドルフ・シュタイナーが考案した、子供が「自由な自己決定」を行うことができる人間になるための教育方法です。テレビなどのメディアを避け、芸術的な観点からクリエーティブな能力を最大限に引き出してくれます。
シュタイナーの教育思想では、人間の本性、すなわち内面の特質を「身体•肉体、Leib」」、「心•魂、Seele」」、「精神、Geist」 に3つに分類します。
また、人間の成長は7年期とみなされ、誕生〜7歳は生命の座である「エーテル体」、7歳〜14歳までは感情と印象の座である「アストラル体」、14〜21歳までは意識の座である「自我」が芽生える時期とされます。
ですから、7歳まではなるべく文字の読み書きをさせず、読み聞かせによるイメージ作りが重要視されます。 そのため、従来の教育システムからかけ離れており、疑問視されることもありますが、最近では自分で思考できる優秀な人材が育つと注目されてきています。

まず、授業はとてもユニークで教科書がありません。ノートに自分で書いてテキストを作っていきます。一人の先生が1年〜8年まで一貫して受け持つため、担任の先生の技量にもよりますが、幸いとても良い先生に恵まれました。
そして一年生の学校は月〜金の午前中です。また、時間割にドイツ語や算数がなく、その代わり、同じ教科を3〜4週間教えるエポック授業という時間に取り入れられます。
1から10という数字だったら毎日ゆっくり数字がどうやって構成されているかを想像力を生かして学びます。



また、一年生の手芸Handarbeitという授業では毛糸で編み物があります。小さい頃から手先を使って、木や毛糸などの自然な材料で人形などを作る喜びと自信を与えてくれます。

集中して何かに夢中になること、そして右脳を発達させ、イメージで記憶してしまうという驚異な教育方法ですが、自我が芽生える最後の2年間はアビトゥーアの勉強もして大学へ進学するチャンスもあるそうです。(勉強ができなかったら、途中で芸術家へ進む人も多いようですが…苦笑)
低学年はテストや通信簿もなく、詰め込み式•採点式とは真逆の教育方法ですが、頑張って大学へ進み、医者やマネジメントクラスになった人もいるそうなので、私は冒険して本人のやる気がでるまで焦らず見守ってみようと思います。

特派員

  • 理夢
  • 年齢寅( とら )
  • 性別女性
  • 職業いけばな活動家

ドイツ在住7年目。海外で「和の心」を忘れず、「いけばな」と「着物」を中心に日本文化活動を行う。日本の美を広めるべく、また次世代にも継承していけるよう精進して参ります。

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