グスタフ クリムトは1862年~1918年の19世紀末から20世紀始めに活躍したオーストリアの画家で、有名な作品には『接吻』『バウアーの肖像』『生と死』などがあり、見ればすぐクリムトと分かるくらいに彼独特のアールヌーボを意識したスタイルで描かれた作品は印象的で知らない人はいないのではないでしょうか?クリムトは、何を描くかより、金箔を使ったり、幾何学模様、長方形…などを用い、どう描くかを肥大化した画家だと思います。みなさんもクリムトの絵を見れば まずは人物より装飾に目がいくのではないでしょうか?でもそれだけでなく、官能的な女性の危うさ、もろさも感じさせます。彼は常に富裕層の財閥、財界の婦人達の肖像をたくさん書いていて、セックス、妊婦、裸体など、赤裸裸で官能的なテーマを描く事でも有名で、甘美で妖艶なエロスを主題としながらもどこか儚げで危うい死のイメージを連想させる部分があります。
例えば有名な『接吻』をとってみても、男性の不自然なキスの仕方、女性は恍惚な表情を浮かべながらも女性の足下の花畑は女性の足のかかと部分で切れており、今にも崖から落ちそうな足下などはただ単に美しいだけでなく、儚い印象を受けます。
彼は生涯愛した本命の女性が一人いたのですが、多い時には15人の女性が行き来していたほど女性関係は盛んだったという事で、その愛人たちとの間に、たくさんの子供も作ったのですが、生涯結婚する事なく55歳の若さでなくなりました。50歳前から頭もはげ上がり、最初私も彼の写真を始めてみた時は何ともエロティック、精力的でこれがあの美しく儚い作品の数々を残した画家なのか?とあまりのギャップに、自分の目を疑ったものでした。しかし、この展示会でいろんな映像を見ていると最後にはそのギャップすら素敵に思えて彼が非常に魅力的でたくさんの女性が彼に惹かれたのも分かるような気がしました。きっと、もし私がこの時代に産まれていたら,クリムトをきっと好きになっただろうな…そしてクリムトの作品がここまで世界中で愛され人気がある=実力なんだと感じました。今回のこの展示会は今までにないモダンなスタイルの新感覚ミュージアムと行った感じで、まず最初に驚く事は、入場料はウフィッツィ美術館より遥かに高いのですが、展示会なのに、クリムトの原画は一枚も来ておらず、入ってすぐにクリムト本人の巨大写真。その奥にある椅子に座って3D眼鏡をかけてクリムトの世界に入る。これがまた自分がどこにいるのか分からなくなるような迫力と映像美!その後は下の階段を下りて行き、小さなホールで画像と音楽を楽しむという感じなのですが、映画を見るように座って見ている人も居れば、教会の床に寝転がって見ている人もいて、言葉でか表現するのが難しいのですが、とにかくこれほどまでに、どっぷり浸かれる展覧会は今まで経験した事がありません。予想した以上に感動し、日々の疲れもぶっ飛びました!とにかく素晴らしい!!
このクリムトの展覧会は4月2日までやっています。是非フィレンツェに旅行に来られる予定のある方、この新感覚展覧会で、クリムトの世界にどっぷり浸かってみられては如何でしょうか?