• 2015.09.04
  • ベルリンの井戸端・シュペーティ
日本在住経験のある外国人は帰国後に日本のコンビニエンスストアを恋しく思う、などと聞きますが、その名が誇るあの便利さは、確かに多くの国に無いものでしょう。日曜日に町中静まり返って買い物に困るというのは、キリスト教文化圏ではお馴染みのことかと思いますが、信仰心の薄いベルリンでも、日曜日の営業が開店法によって規制されています。飛行場やパン屋・花屋などは例外的に営業が認められていますが、これに該当しない、飲料など新聞以外の商品を扱うキオスクも夜中や日曜日に開いており、こちらではシュペートカオフ、若しくは略してシュペーティなどと呼ばれ親しまれています。

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ところが、2014年からノイケルン地区でシュペーティ休日営業の取締りが強化されており、彼らに取っての書き入れ時・日曜日に閉める店が出始めています。罰金は初回の250ユーロから2500ユーロまで、取り締まられた回数ごとに額が上がります。繰り返し支払うことによって17000ユーロを払うハメになった店もあるとのことです。タバコや雑誌の高いものでも十数ユーロ、安いものでは5セントの飴玉バラ売りなどをしているシュペーティですから、罰金のリスクを覚悟する程の売上げがあるとは思えません。しかも度重なる罰則をすれば閉店に追い込まれるそうです。しかし儲けの出せる日曜日に締め続けても閉店の危機に見舞われることに変わりはありません。

そこで立ち上がった、ある20代の地元住民は、オンラインの嘆願活動で今日までの3ヶ月間に32100の署名を集めています。ベルリン独自のキーツ(一帯を特徴付ける雰囲気を持ち、地元の連帯感がある住宅地の一角)文化を守れ、と銘打ち、地元交流の場となっているシュペーティが日曜も営業できる様、市長らに嘆願するつもりだそうです。

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私の暮らすキーツのシュペーティも、経営者家族の皆がキーツ住民から下の名前で呼ばれ、受取人不在の郵便物を預かり、サッカー観戦に路上バーベキューと、人が集まる場となっています。何週間も見かけない住民の行き先や帰宅時期、近所の警察沙汰などの噂も大体、そこに集まる誰かしらが知っており、地区コミュニケーションの軸になっていると言えるでしょう。
宗教由来の文化や規則を守る南ドイツ人との対比を好んで強調し、オープンで自由、細かいことを気にしないことが売りのベルリンです。シュペーティが日曜に閉まらなくてはいけないなんて「ミュンヘンじゃあるまいし」けしからぬというのが大方の意見です。ガソリンスタンドに付属する売店は365日24時間の営業を認められていますから、例外適用を望む余地はあるでしょう。

酒に弱いインドア派の私は、夜中に買い物ができなくても特に困りませんが、夜中のコンビニよりも、一晩中コンビニを開いていられる日本の治安の良さを懐かしく思います。

特派員

  • 渡辺 玲
  • 職業通訳、中華料理店店長代理

ベルリン自由大学の修士課程を卒業。専門分野は、映画理論、ドイツ新現象学、神経哲学。ベルリン在住13年目、住んでいると当たり前になってしまうベルリン生活を、皆さんへご紹介することで再発見していきたいと思っています。

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