東京に次いで、現在神戸の兵庫県美術館で開催されている『プラド美術館展』(*1)もその一つです。
その条約締結記念行事の一環としてマドリードにやってきたのは、なんと日本のお化け、妖怪、もののけ、怪物、悪霊、青鬼、赤鬼、から河童まで参加する一大使節団、酷暑のスペインに涼をはこんでくれました。
広島県は三次市所有の湯本豪一コレクションから《百鬼夜行絵巻》 《稲生物怪録》などの絵巻物を中心に妖怪関連の浮世絵、錦絵、書物、工芸品等々が出品された展覧会(*2)が開催されています。
展覧会の会場でもある共同主催者の王立サン・フェルナンド美術アカデミー HPより
妖怪と聞くといかにもおどろおどろしい世界を想像してしまいがちですが、今回拝見した妖怪達、どこか愛くるしくて、お茶目でヤンチャなキャラクターが多く、魑魅魍魎が跋扈するはずの《百鬼夜行絵巻》もアメリカ映画の《スター・ウォーズ》や《メン・イン・ブラック》に登場する異星人キャラクターの元ネタではないかと思う程憎めない登場人物(怪物)満載です。
映らない鏡を使ってせっせとメイクに励むお歯黒オカン。
もしかするとジョージ・ルーカス監督作品に出演したジャバの親戚筋?
もちろん西洋でも神代の昔から一つ目入道やら頭髪が毒蛇の蛇女など神話に登場する妖怪には事欠きません。エジプトのピラミッドを悪霊から守る人頭獣身のスフィンクスも言ってみれば妖怪、物の怪の類と思われます。ピーター・パンの腰元ティンカーベルもリカちゃんとウスバカゲロウの合体版みたいな妖精ですよね。
プラド美術館でも異彩を放つルネッサンス時代のフランドルの鬼才ヒエロニムス・ボッシュの作品なども妖怪オンパレード。
ボッシュ作《トゥヌクダルスの幻視》プラド美術館HPより。
ところで妖怪展の会場になった王立サン・フェルナンド美術アカデミーはスペイン絵画の巨匠であるゴヤが絵画部門のディレクターを務めていたり、近代ではピカソやダリも所属していたという由緒ある場所です。
ゴヤは代表作の《裸体のマハ》《着衣のマハ》や王侯貴族の肖像画、タペストリーの下絵などで知られていますが、もし残していたのがそれらの作品だけだとしたら、気の利いた王室お抱え絵師との評価だけで終わっていたでしょう。しかし晩年に制作した《黒い絵》を中心とした妖怪関連作品群があるからこそ古典派最後の画家であり近代派最初の画家として現在でもスペイン絵画界の巨匠と位置付けられてると思います。
そのゴヤの作品が多く収めれているのが王立サン・フェルナンド美術アカデミーの併設美術館なので今回の日本妖怪友好代表団をお迎えして日本・スペインお化け交流会をするには最適な場所と言えますね。
ゴヤが描いた『鰯の埋葬』カーニバル最終日の楽しい行事でもゴヤが描くとほぼ妖怪祭り。所蔵する王立サン・フェルナンド・美術アカデミーのHPより。
《サン・イシドロの祠への御参り》 これもゴヤ版《百鬼夜行》 プラド美術館HPより。
末筆で恐縮ですが、三次市の皆さまを始め今回の西日本を中心とした豪雨災害で被害に遭われた方々、また関係者の皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。
(*1)『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』
神戸展 会期: 2018年 6月13日(水)~10月14日(日)
会場:兵庫県立美術館
(*2)『妖怪:想像のイコノグラフィー展』 『Yokai:Iconography of the Fantastical』
マドリード展 会期: 2018年 7月17日(水)~9月23日(日)
会場:マドリード王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館
主催:王立サン・フェルナンド美術アカデミー ・国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)