ところで、文化活動の発露ともいえる美術館についても“今行けなくても当面の日常生活に支障はない施設”なので休館を余儀なくされていたのはスペインでも同様でした、と過去形を使って言えるのもマドリードの国立プラド美術館の一般公開が始まったのです。その名も“Reencuentro・再会”なんともロマンチックな命名ではありませんか。
これらメンバーをはじめ美術館の代表作登場人物達が皆様との再会をお待ち申し上げております。美術館前に設置された案内のポスター。
開館に際し感染予防対策には当然のことながら出来る限りの配慮がなされました。今ではお決まりのマスク着用、体温測定、手と靴裏の消毒、2mの身体的距離の確保の義務付けはもとより、一日の入館者数をネットで事前予約をした合計1800名と限定し、また鑑賞可能作品も厳選された249点のみ、そしてあらかじめ設定された道順に沿っての鑑賞となります。ちなみに入館料は普段の15ユーロの半額で一般は7.5ユーロ、65歳以上の高齢者はそのまた半額で3.25ユーロ、約400円でプラド美術館の精華を堪能できます。
このルート作成については美術館内に各派ごとに分散していた展示場所から190点の作品を移動して年代順を基本にして並べ替え、またテーマによっては比較対照できる形で構成するという、今までとは異なったコンセプトで作品を鑑賞できる唯一の機会を生み出しました。
再会展鑑賞ルート
以下通常展示室より移動して再構成された代表作の一部をご紹介します。
①②最近修復が施されたフラ・アンジェリコ作『受胎告知』がファン・デル・ワイデン作の『十字架降下』と対峙しています。
③④『バッカスの勝利・酔いどれ達』と『織女達・アラクネの寓話』 プラド美術館の中心となるこの展示室はベラスケスの代表作である『女官達-Las Meninas』を中心とした部屋で今回は史実に基づいて1899年ベラスケス生誕300周年を期して行われた構成を再現したとのことです。
⑤⑥ルーベンスとゴヤが同じテーマ『我が子を食らうサトゥルヌス』で競作。
⑦⑧通常は階下で並べて展示されているゴヤの連作『マドリード1808年5月2日』と 『マドリード1808年5月3日』がゴヤ・ホールの自然光の下で向い合わせの展示となりました。
ファロミール館長は“3ヶ月近い休館で禁断症状に襲われていたプラド中毒患者の人々にとって今回の『再会展』は格好の解毒鎮静剤となるでしょう”とか”スタンダール症候群(*)を発症する可能性がありますよ“などとユニークなコメントをなさっています。
『再会』『Reencuentro』『Reunited 』
会場 国立プラド美術館・マドリード
会期 2020年6月6日(土)~2020年9月13日(日)
プラド美術館 当展覧会紹介HP https://www.museodelprado.es/en/whats-on/exhibitions
(*)19世紀フランスの作家スタンダールがフィレンツェを訪れた際に教会のフレスコ画を見上げてその素晴らしさに激しい動悸に襲われ失神しかけたことからこの病名がつきました。実は長い時間首を後ろに曲げていると頸椎動脈が圧迫されて小さな血栓が出来、首を元に戻すと脳に血栓が上り、目まい、頭痛、吐き気、などが起きたりすることがあるとの事、ヘアー・サロンでは洗髪中に長時間シャンプー台の縁で首を圧迫するので、美容院脳卒中症候群とも呼ばれているそうですから美術館と髪結いさんではご注意下さい。