• 2021.12.08
  • 新型コロナワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種
 スペインでの新型コロナウイルス新規感染者数は急激に再拡大が始まったドイツ、イギリスやオランダなどと比較するとまだ少ないとは言え再び上昇傾向が現れてきました。そんな中ワクチン接種は着々と進んで、11月15日時点で12歳以上の接種可能人口の89.00%にあたる3742万0562人が2回接種(Janssen社製は1回)済です。そして10月からは高齢者への3回目接種が始まりました。今のところ2回目接種から6か月以上経過した高齢者が対象で、すでに11月15日時点で278 万2583人が追加接種をすませています。このブースター接種、和食の基本である出汁の力をより引き出す“追い鰹”にちなんで日本では“追いワクチン”とも呼ばれているとか。

 スペインでのブースター接種が始まってから1ヵ月後の11月5日、私が2回目の接種を受けた5月4日からちょうど半年経ったので順番が回ってきました。今回接種を受けたのは前回2回と違って総合病院に設けられた大規模接種センターではなく、歩いて2分のご近所にある診療所です。以前は入口で検温され、係員の監視の下で両手の消毒、マスクは不織布と決められており自作の布マスクはNGでしたが、今回は体温測定なし、消毒は自己判断、布マスクOKでした。ポルトガル特派員の太田さんのご報告と比べるとスペインは随分と緩くなったのかと思います。


写真1

写真1.このように日本の木綿手ぬぐいを利用したお手製の布マスク(ご近所で評判です)でもお咎めはありませんでした。布製とは言っても表地と裏地の間にキッチンペーパーを挿入して使用しています。どのみちキッチンペーパーもパルプと呼ばれる植物繊維を織らずに成形した不織布紙といっていいかもしれません。

使い捨ての不織布マスクが医療用も含め石油由来のポリプロピレンやポリエステル、ポリウレタンを原材料としていて、天文学的な数(*)のマスクが世界中で燃えるゴミとして廃棄されCO2を排出しているのと比べるとキッチンペーパーを装着した洗える木綿マスクのほうが自然に優しいですし、今話題のSDGsの目的にもかなっているのかなと思います。
(*)世界中で毎月1290億枚の不織布マスクが使用されているそうです。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.0c02178#
さて今回も接種券やら予診票、予約手続きなどは一切必要無し、電話とSNSで届いたお知らせの日時に指定された場所へ出向くのみです。そこは接種会場というにはあまりにも慎ましい、診療所の玄関口にある受付スペースに必要器具を持ち込んだにわか仕立ての場所でした。指定された時間に行くと行列も無く、医療事務員さんと看護師さんが待ち構えていました。医療システム端末にデータを打ち込む係員と接種担当者です。まず問診ですが質問はただ1つ¿Cómo estás? 調子はどう?で終了です。前回、前々回はもう1問¿Derecho o izquierdo? 右肩にする?左がいい?と聞いてくださったのですが今回その質問はありませんでした。

というのも“追いコロナワクチン”と“季節性インフルエンザワクチン”を同時接種するので否応なしに両肩片方づつに筋肉注射するしかないです。もちろんどちらも義務ではないのでどちらかを拒否するという選択肢はあります。私の場合は指定時間に部屋に入って接種終了まで約3分、証明書のプリントアウトに約1分で合計5分もかからず完了し、お約束ごとの接種後容態観察休憩タイム15分を含め診療所滞在時間20分でおしまいです。ちなみこれら新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、だけでなく今までの肺炎球菌、破傷風・ジフテリアなどのワクチンはすべて無料で接種していただきました。


写真2

写真2.はその場で発行された新型コロナウイルスワクチン3回接種情報です。こちらにはインフルエンザワクチン投与記録はありません。


写真3

写真3.はマドリード州バーチャル保健証(Tarjeta Sanitaria Virtual de Madrid)アプリでダウンロードした3回目追加接種登録済EU証明書です。こちらに記載されているのは最終接種(3回目)の日付だけで、前2回分の接種日時の記載はありません。また、製造会社名がBioNTeck社のみでPfizer社の記載がありません。欧州製を強調したいEUの意地でしょうかね?


写真4

写真4.もアプリからダウンロードしたその他のワクチン接種履歴で10年前まで遡って登録されています。
副反応については、高齢者で基礎疾患もある私がワクチンのダブル接種後、2日間程度は筋肉注射をした両肩(三角筋前部)に鈍い痛みを感じましたが、幸いにも2週間後の現在まで2種同時接種によると思われる自覚症状は“まだ”ありません。ちなみにコロナワクチンは3回ともPfizer/BioNTeck社製です。

北半球では季節性インフルエンザの感染拡大が懸念される時期に入りましたね。昨冬はコロナ対策に多くの人々が神経をとがらせて行動していたこともあってか、ほとんど問題視されていなかっただけに、現状では比較的コロナが落ち着いて来てガードが下がった分、今年はインフルエンザの蔓延が例年にもまして危惧されていて、コロナ・パンデミックとインフルエンザ・パンデミックの同時進行する“ツインデミック”の可能性があるとの認識からか、インフルエンザワクチン接種開始の10月から追加コロナワクチンとの同時接種が行われています。この異種混合同時接種はイギリスなどではすでに9月から始まっているとのことです。

日本でも10月からインフルエンザワクチン接種が始まり、コロナワクチン追加接種も11月11日に特例承認されたPfizer/BioNTeck社製コミナティ・ワクチン使用で交互接種も含めて12月から始まるそうです。しかし厚生労働省の見解は、『原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。新型コロナワクチンとその他のワクチンは、互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。・・・・』 です。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0037.html

世界の傾向としては、世界保健機関(WHO)10月21日、やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)8月31日、 英国公衆衛生庁(PHE)8月6日、ドイツ予防接種常任委員会(STIKO)9月14日、フランス高等保健機構(HAS)8月23日、イスラエル保健省(IMH)6月24日等が、差し迫った冬季のインフルエンザ流行を見据えて、同時接種も含めタイミングを問わず異種ワクチンの接種が可能との見解を示していて、フランスのようにあえて同時接種を奨励する国もあり、スペインでも上述のごとくデフォルトで同時接種です。2週間の待ち時間の間にどちらかに感染して発症するリスクを避けるのと、一度で済ませて医療機関の負担を軽減するという意味もあるのでしょう。接種場所が遠隔地であるとか、移動が困難な人たちにとっても二度手間が省けて助かりますよね。

新内閣発足後の岸田総理大臣は第一声で“さまざまな課題にスピード感を持って対応していきたい”ともおっしゃいました。厚生労働省厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)が重点を置く“諸外国の対応状況”に鑑み、冬場を向かえ喫緊の課題である新型コロナウイルスとインフルエンザ感染拡大のツインデミック対策のひとつとしてコロナ・インフル同時接種の禁止条項を“スピード感を持って”見直す機会かもしれません。
スペインの情報をお伝えするコーナーではありますが、遠くにあって故郷を慮る老婆心とでもご理解いただければ幸いです。


特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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