写真1
で今回ご紹介するのは北西アフリカ沿岸に浮かぶ7つの島からなるカナリア諸島です。日本でカナリアという言葉を聞いて最初に頭に浮かぶのは素敵にさえずるあの黄色い小鳥ではないでしょうか。しかしヨーロッパ、とくに英国やドイツ、北欧など太陽に余り恵まれていない地域の人々にとってのカナリアは小鳥よりもまず思い浮かべるのはバケーション、リゾート、ビーチ、常夏、でしょう。.鉛色の雲に閉ざされた母国を抜け出し、クリスマスツリーを水着姿で眺める事が出来る楽園です。写真1.はカナリア諸島の航空写真です。右手に見えるのはアフリカ大陸北西端に位置するモロッコ王国の南端です。
図1
これらの島々の存在はローマ時代からヨーロッパ人に知られていて、沢山の犬がいたことから『犬の島々・Canariae Insulae 』とよばれカナリアの語源になったとも言われ、この説を踏襲して図1.のように現在のカナリア州の紋章は2頭の犬が七つの島を守っているデザインです。また犬だけでなく小鳥のカナリアもこの諸島が原産です。
現在ではヨーロッパ有数のリゾート地ですが、昔から海上交通の拠点でもありました。15世紀、大航海時代と呼ばれてポルトガル王国やスペイン王国などの命を受けバスコ・ダ・ガマやクリストファー・コロンブスが活躍する発見の時代が幕をあけます。その際長期の航海に備える最後の補給基地として重要な役割を果たしたのがカナリアの島々です。コロンブスは4往復した大西洋航路で4回とも往路にカナリアの港に立ち寄っています。
その重要性は現在でも変わらず、たとえば日本の遠洋漁業マグロはえ縄漁船団の補給基地として70年代の最盛期には年間500隻もの日本籍船が寄港していました。2016年でもラス・パルマス港の漁船入港数は国別2位のモロッコ船30隻の3倍、91隻の日本船の入港が記録されています。
そしてヨーロパの観光需要復活の兆しが見えてきた矢先、今年9月19日諸島の西に位置するラ・パルマ島で火山の噴火が起こり現在12月14日までの86日間溶岩流が止まりません。あらかじめ頻発した地震活動があり住民の避難は適切に行われ、自宅の屋根に積もった火山灰を取り除く作業をしていた72歳の男性がお亡くなりになったのが今のところ唯一の死亡事故です。
すでに大阪城公園の約11倍の面積に相当する1226ヘクタールが溶岩流に覆われてしまいました。破壊されたり埋没した建屋数は2910に上り、避難している住民は7000人と大変な被害が続いています。元来火山島なのでこのような噴火は初めてではなく、直近では1971年の10月26日から11月18日まで続いた噴火があり、現在記録更新中という事になります。
写真2
写真2.は溶岩流の広がり具合です。バナナ栽培と観光産業がおもな経済活動の島ですので少しでも島の経済を支えようと、火山灰を被ってしまって見栄えは悪くなっても中身は通常の甘くてモッチリの美味しさは変わらないので開き直って“火山バナナ”として売り出したり、噴火の様子を間近に見られる“噴火と溶岩流ウォッチング体験ツアー”などが企画されて、逆境にもへこたれない島の人達の気概を感じますが、ともあれ早く収束してほしいものです。
写真3
写真3.は“火山バナナ”です。ラベルには“Plátano de Canarias/del volcán カナリアバナナ/火山産”と書いてあります。最近は廉価な中南米産が多く輸入されているなかでブランド力もあり値段は少々張りますが、野菜や果物の外見をあまり気にせず実質をとるスペインの消費者には根強い人気があるので、連帯の意味もふくめて期間限定特別バージョンバナナを求める人が増えてくるでしょう。