図1
図1はヨーロッパ諸国に於ける公共交通機関利用時のマスク着用義務の有無を示しています。義務化を続けているのはスペイン、ドイツ、チェコ、スロバキア、エストニア、ギリシャとキプロスの7か国のみです。それ以外の国ではすでに去年8月に義務化を解除したデンマークを筆頭に12か国がそれに続きました。そして英国やスウェーデン、リトアニアなど9か国では義務ではないが着用を推奨するとしています。変則的な対応なのがオーストリアで国として着用義務は無しとしていますが、例外としてウィーン都市州内では着用が義務付けられているそうです。
日本と違って一般人にとってはマスク文化の無いスペインでコロナ禍以前は病院や工事現場、食品・化学工場など以外でマスク姿を見ることはほとんどありませんでした。そんなマスク慣れしていない人たちの着用によるストレスは日常生活で普通にマスクと接していた日本人と比べ相当大きいでしょう。多分今回のパンデミックが無かったとしたら大多数のスペイン人は生涯一度もマスクを着けなかったであろうと思いますね。そんな土壌でマスクを着けてもらうには義務化しかなく、反対に解除となれば一斉に外したい気持ちも理解できます。しかし10月7日時点でスペインの累計感染者数13,441,941人、死亡者数114,468人と未だ予断を許さない状況下ではすぐに全面解除ともいかず慎重な対応にならざるを得ない状況でしょう。
英国女王陛下の国葬の映像では参列者のみならず見守る市民も屋外屋内を問わずマスク姿はほとんど見かけませんでしたが、その8日後に行われた日本の国葬の映像での見事なまでのマスク一色でその違いに海外メディアも驚いたようです。それが理由かどうかは定かではありませんが、日本では参院本会議での首相の方針は脱マスクに関し『科学的な知見に基づき世界と歩調を合わせた取り組みを進める』でした。世界と歩調を合わせるとは諸外国の状況を鑑み上記の欧州諸国の対応も参考にしていただけるのでしょうか。
ある意識調査によると日本人が考える脱マスクのタイミングについて1位が『特効薬が出来たら』48.5%、2位『感染者が減ったら』39.2% 3位が『国から言われたら』30.3% だったそうです。そして国としてはマスク着用を法律で義務化できないので、あくまでも推奨するルールという形で屋内と屋外、会話をするかしないか、対人距離が2m以下か以上か、大人か子供か幼児か、で着脱の判断をしてくださいということらしいです。あえて医療機関、公共交通機関、などと場所の指定はしていないのも欧州諸国との差を感じますね。
写真1
そこで日本政府のご英断で脱マスク化が進み使用量が少なくなれば使用済み不織布マスクの環境汚染問題をも削減してくれるでしょう。何しろ多くの不織布マスクがポリプロピレン・ポリエチレン・ポリウレタン・ポリエステルなど石油由来のプラスチック素材の代物にもかかわらず感染拡大予防の立場から日本の各自治体では可燃ごみとしての処理をお願いしている現状です。毎月世界では1290億枚の不織布マスクが使用されている(*)中で、日本では燃えるゴミとして処理されCO2を排出、また廃棄されたものは海洋汚染の元凶にもなっているのです。スーパーの食品トレイ、コーヒーショップのストロー、レジ袋有料化などエコ対応が進んでいながら政府としては新型コロナ対策の基本的対処方針で不織布マスクを推奨しているので、温暖化に突き進む現状を変えるには不織布マスク不使用も一助になるのかなと思ってしまいます。写真1.は不織布マスクに使用されている素材の一例です。
今回もスペインの話題からお節介にも祖国の状況にまで話が飛んでしまいました。
遠くにありて思う故郷です。
(*)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.0c02178#