• 2023.11.10
  • メルルーサ

図1

図1.は先日10月4日統計会社Statistaが発表した2022年スペインの家庭で消費された魚類のランキングです。 第一位は二位のサーモンに大差をつけたメルルーサです。地中海や大西洋、ビスケー湾など海に囲まれた土地柄、歴史的にも海産物が食生活の大きな部分を占めていて、甲殻類や貝類、マグロ、鮭、鯛やヒラメ、北欧ではあまり食されていない鯖、鯵、鰯などの青魚、深海にいる鮟鱇、悪魔の魚と呼ばれていたタコやら人気のイカ、なんとイソギンチャクから亀の手まで食卓に上る魚介王国です。それにしてもこの表で気が付くのはその他の部門の多量さ、流石に海物愛にあふれた国民です。

そんなスペインの魚部門で消費量一位のメルルーサ、以前は高級魚の扱いでしたが漁法や冷凍技術、運送手段の発達とともに輸入も増え、その低価格、調理のし易さも相まってトップに躍り出たようです。世界中には16種類のメルルーサが存在する中で、スペインでの消費される大部分は以下の4種類で主に南半球からやってきます。

・アルゼンチン メルルーサMerluza argentina(Merluccius hubbsi) 冷凍、無頭、ぶつぎり、切り身、皮つき、皮なし。
・チリ/南 メルルーサ Merluza chilena o austral(Merluccius australis) 冷凍、無頭。
・セネガル メルルーサ Merluza de Senegal (Merluccius senegalensis)冷蔵。
・ケープ(岬)のメルルーサ Merluza del Cabo (Merluccius capensis)冷凍 冷蔵。


写真1

これらの輸入物はほとんどトロール漁方式などを使用して大量に捕獲するので魚体を傷つけてしまい、味にも大きく影響するということです。写真1.は近所にある全国チェーンのスーパーマーケットが仕入れたケープ(南アフリカ)のメルルーサです。キロ当たり9.95ユーロ、1560円、歩留まり50%とすると可食部分はキロ3000円になるでしょうか。おまけで下に顔をのぞかせているのは鮟鱇で頭だけでも販売しています。通常は出汁を取るのに使うようです。我が家の鮟鱇鍋に投入するのは頭とアラだけ、骨や皮をしゃぶりつくして満足しています。

そして漁獲量も少なく高級食材として扱われているスペイン産のメルルーサは       
・ヨーロッパ メルルーサ Merluza europea (Merluccius merluccius)鮮魚、丸魚で販売されその捕獲法はあくまでも魚体に与えるストレスを最小限にとどめる一本釣りや延縄で、根こそぎさらう底引き網とは環境負荷程度に雲泥の差があります。また捕獲量や漁法も制限されているので勢い価格にも影響し、値段も輸入物と比較すると優に3倍は下らない値段です。そもそもメルルーサという名前自体スペイン語でその語源はmer 海の luccius パイク、で同じ肉食の淡水魚 ノーザンパイク の海バージョンとの命名です。

実は日本でも非常にポピュラーな魚で、名前は知らなくても誰しも一度は口にしたことがあると思います。詳しい出自は公表されず白身魚フライとアバウトな名前の下、ファスト・フード店のフィシュ・バーガーや、海苔弁における定番おかずとなり、またすり身は竹輪やはんぺんなどの材料として使われています。名前は大っぴらされずとも、安価な総菜魚としての地位に甘んじて日本人の食生活に多大な貢献をしている魚です。ちなみに日本に輸入されているのは主に南米産やニュージーランド産・とくにニュージーランド メルルーサMerluza neozelandesa (Macruronus novaezelandiae)で、こちら名前はメルルーサですが分類上はホキだそうです。

所で、このメルルーサを歌った曲に♪愛しのメルルーサ♪があります。田渕タブレット純さんご自身が作詞、作曲、歌、演奏とすべて担当されたムード歌謡で、スペイン語の名前に呼応するがの如くフラメンコ調に仕上げられた海苔弁、メルルーサ・フライ賛歌です。興味のある方は動画サイトなどでご視聴下さい。

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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