• 2017.08.18
  • 道しるべに従うと、、、
ミラノって本当に小さい都市なんだなぁ、とつくづく思うのです。町の中心、例えばドゥオモから郊外に向けて車を走らせると、30分でトウモロコシ畑に囲まれます。

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ミラノコレクションと呼ばれファッションウィークには長身のモデル達が街中で見受けられ、イベントが盛んに行われ、祖先代々からの貴族達の豪華な住まいが並ぶ地区を憧れに満ちた視線と想像に掻き立てられながら闊歩するミラノの華やかな中心地。でもよくよく注意してみると、数々の修道院や農家がこのファッショナブルで高貴なミラノを取り巻いています。

ミラノ付近で車を走らせていると、「右に○○農家あり」とか「××修道院へはこちら」という地域的または歴史的建造物案内のための小さな表示が結構あります。で、興味本位で道しるべに従うと、大抵は道が極端に狭くなり、道の両側は一段下がった畑。しかも一方通行ではないうねりくねる道を不安になりながら進むと、アスファルトも消えて砂利道のみ。どこに行っているのだろう、と更に不安になり、でも、引き返すわけにも行かない道を前進のみ。

鄙びた建物が見えてきて、ホッとしながら砂利道の延長とも言える駐車場らしき場所にパーキングをして、農家を訪問する。すると、牛や鶏などが飼育されていて、農家で育てている野菜や、ホームメイドの食料品が買える、というのが大抵。

農家手作りの製品を買って、向かいから来る車をなんとか躱しながら帰宅する。砂利道の走行のせいで、黒い車が砂埃にまみれてしまって新鮮な食品は魅力的だけれど、細道と言い、そう足繁く頻繁に通う気にはなれない、、、というのが私の本音。


これらの農家の販売だけでなく修道院でも、手作り活動がとても盛んです。食品だけでなく、石鹸やクリームなども。実は近年、修道士や修道女になる人がイタリアでは激減しているようです。実情、イタリアで司祭になる人には近年、アフリカ人、アジア人、中南米の人が増えイタリア人が著しく減っているとか。修道院の敷地や建物の維持も、サポートしてくれる財団などが見つからず試行錯誤を繰り返して経営の持続を試みているのが実情です。


そのうちの一つ、ミラネーゼにもあまり知られていないミラソレ修道院。経営に失敗した実業家が初心に戻って肉体労働をしながら、修道院生活を送り、持ち備えた実業的経営本能を生かすチャンスを与え、修道院を活性化した歴史に触れました。

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「ミラソレ修道院へはこちら」という表示が普段から気になっていたので、ある日曜日、思い切って訪問してみました。午後は16時オープンと書いてあるのですが、勘違いで15時にオープンと思い込んで15時半に到着したにも関わらず快く門を開けて訪問を許可してもらいました。こういうポジティブな融通さがあるのがイタリアのとても良いところ。

こういう場所は、経営している人、そこに住んでいる人の説明を聞くのがとてもタメになります。ホームページ、サイト上またはネット上では見逃したり、見つけられない特別なお話が聞けたりするのです。観光客どころかミラネーゼ達も知らないので、日曜日の午後だったにもかかわらず訪問者があまりいなくて(それこそサイクリングロードでサイクリングをしている時に見つけて立ち寄る、という訪問者の姿も目立ちましたヨ)、修道院経営者は丁寧に応対してくれて、ゆっくりとお話を聞けるのがミラソレ修道院の魅力。

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修道院の周りは例によってトウモロコシ畑。ミラノの街からとても近いのにもかかわらずまるで田舎の真ん中の隔離されたように感じられるこの小さな修道院は、経営失敗をした過去のミラネーゼ実業家たちを何人も立ち直らせたに違いない底力の強さを感じる場所なのです。

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これからもひっそりと、でも力強くミラネーゼを支えていくのでしょう。



特派員

  • 三上 由里子
  • 年齢戌(いぬ)
  • 性別女性
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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