• 2018.12.18
  • 北イタリアの冬事情
暖かかったミラノの今年の秋。そしてもう12月に入ったと言うのに、例年に比べると緩やかな寒さが続いています。

通常の冬というと、湿っぽくて骨まで染み込むような意地悪な冬の寒さがミラノを襲います。人間の体は70%が水で出来ていることを実感するのが、ミラノの冬です。冬になると湿度がとても高くなるのがミラノで、湿気をたっぷり含んだ空気に水で出来た人間の体がくっついてしまう、と言った方がミラノの冬を想像しやすいでしょうか。この時期のミラネーゼは、毛糸の帽子を被り手袋をはめ込んで防寒対策をしっかりして外出するのが普通です。人生で帽子なんてスキーキャップを買ったぐらいの経験しか無い私は、ミラノに移住した当初、老若男女帽子を被る冬の習慣を物珍しく見ていたものです。実際住んでみると、本当に帽子が欲しくなります。


私は寒がりでは無いのですが、そんな私を震え上がらせた国があります。北国のノルウェーで一冬を越した経験があるのですが、ノルウェー滞在の最初の1、2週間の私の出で立ちは、重ね着に重ね着で膨れ上がって滑稽なものでした。重ね着のしすぎで靴を履くために体を曲げることが出来ない事に気がついた時は、体をよじりながら自分の姿に笑ったものでした。重ね着の重みを引きずって凍りついた歩道をノロノロと歩いている私の横を、ノルウェー人がミニスカートの軽装で足早に通り過ぎていくのを我が目を疑いながら、と同時に羨望の眼差しを送ったものです。そう言う私も、ノルウェー滞在の2週間を過ぎた頃から、体がノルウェーの寒さに慣れてきて1枚づつ重ね着を減らしていくことが出来て、コートを着込んだ後に靴を履くことが出来るようになっていました。


さて、イタリア北部では、車のタイヤを冬用タイヤに交換するのが規則となっています。11月15日から3月15日までは、積雪に対応したタイヤを装着していなくてはなりません。そうでなければ、車にチェーンの搭載が必須となっています。突然の降雪に走行不可能にならないように、交通を麻痺させないように北部の住民は規則を守らなくてはなりません。この時期になると、業者はタイヤ交換の予約で朝から晩まで一杯になるので、タイヤ交換を含め諸所の修理のためにはドライバー達は良い時期を逃さないように気をつけていなくてはなりません。


3000メートル級の山々に囲まれた町、スキーリゾート地Cortina d’Ampezzoに行った時の事です。ミラノから車でヴェネツィアの方面に向かい、ヴェネツィアの手前で分かれ道があって更に北上する道を辿ります。すると「降雪注意、チェーン装着必須」の電光掲示板が脅かすかのように注意を促し始め、雪が降り始めた途端あれよあれよと言っている内にすっかり雪景色になってしまったのはいいのですが、町への到着まであと数キロという山道の坂で車の渋滞に巻き込まれてしまいました。そこで目にした光景は、突然の大積雪に対応できていない人々でした。走行不可能になったドライバー達がチェーン装着作業をまさに走行中の道路上でするので、冬用タイヤ装着済みの後続の車は追い越すことも出来ずに、エンジンを切って待つ羽目になりました。

今年も、例年通り11月中旬には冬用タイヤを装着済みなので、私は「雪よ、いつでも来い!どんと来い!」です。わっはっはっは。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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