今となっては恥ずかしい思い出となって、頭の中では消したくても消せないあの落書き。やってはいけないのだろうな、と子供ながらに察してはいたのですが、大人を待たなくてはならない退屈な待ち時間だった上に、その壁には他の子供達による落書きが沢山あったので、何となく始めてしまったあの落書き。母に見つかって「あら大変!壁に落書きはしちゃダメよ」と言われて、「ああ、やっぱりしてはいけない事をしちゃったんだ」と自分が薄々思っていたことが当たった事件として強烈な経験だったのです。その後、その壁の前を通る度に、その落書きを目の端でチラリと見るのですが、落書きの方が私を真正面からじっと見据えているような、何とも居心地の悪かったこと。
で、今回はミラノ市内の落書きについて、、、ではなくて、ミラノ市内に見られる落書きは、なかなか面白いトピックなのでいずれ取り上げようとは思いますが、またこの次。
今回は、バチカン美術館について。
先日バチカン美術館を訪れました。
で、落書きを見つけた!
、、、、、、では、ありません。
バチカン美術館は世界最大級の一つに数えられている大規模な美術館なので、前もって下調べをしてから見るものを選別しておかないと、閉館時間になっても見学の途中で中途半端に終わるか、質と量にひたすら圧倒されて飽和状態見学となり、何も記憶に残らないことになってしまいます。
さて、私にとって2回目のバチカン美術館の今回の見学は、閉館後の一般見学者が退館した後に、特別な入場をする機会に恵まれました。お陰様でガイドさんが考えてくれた約1時間半コースで静かに素早く見学することが出来ました。
そこで今回の見学で一番気になったこと(気に入ったことと表現した方が正しいかしら?)は、巨匠ラファエロの作品。
ラファエロの初期の作品などを見た後に「ラファエロの間」と呼ばれている部屋にたどり着き、私を待っていたと言わんばかりの迫力満点の壁画が私の視界に広がりました。
今回の見学のお気に入りポイントは、ラファエロがこれらの作品に自分の姿を忍ばせて描いていること。それを彼のいたずら心と解釈する私は単細胞かもしれません。それどころか、キリスト教と哲学などをテーマにした壁画のその片隅に、時代の違うなりふりをした人物が一人、その人物だけがこちらをじっと見ているのがラファエロだ、とガイドさんに教えられたときに、なぜか自分の落書きを思い出してしまって、、、
世紀の巨匠の傑作壁画に私の落書きとの共通点を見出そうとする自分に我ながら呆れながらも、きっとラファエロも幼少時に落書きをしていたに違いない、とこじつけた彼の人生を想像するのです。
絵画にあまり興味が無い人でも、ラファエロに焦点をあてて鑑賞に訪れると初期の作品と後期の作品の違いなどが見えて来ますし、忍ばせて描かれたラファエロ探しにポイントを置くだけでも楽しめますよ。
学校で習ったプラトン、アリストテレス、ソクラテスなどが描かれている壁画、「アテナイの学堂」も容貌からこれらの人物を言い当てるのも面白い見方になります。
で、ラファエロについて調べていくと、なかなか面白い人生を歩んだことが伺えますよ。とりわけ天才、セックス好きで、早死なんてことがわかってくると、音楽家である私にはモーツァルトを連想させるわけです。
7歳年上だったミケランジェロ、30歳年上のダ ヴィンチがいた時代で、合わせて今日に至っては三大巨匠と呼ばれているこの3人は、ライバル意識で嫉妬、嫌悪、焦りなどの感情にさいなまされつつ創作活動をしていたに違いありません。
さて、「ラファエロの間」を後にして、バチカン美術館の最後にたどり着くと、システィーナ礼拝堂。そこには誰もが見るのを待ちかねるミケランジェロの最高傑作が。
「感動」の一言に尽きます。是非、鑑賞しに来てください。