彼女はスイスにコンサートをしに行った後日、スイスから報酬支払い手続きにおいての書類を受け取った際に、質問事項の1つに「宗教」を見つけて戸惑ってしまったそうです。「無宗教」または「無回答」と答えたら、報酬に影響が出るのかしらね?と共に笑ったのですが、その後の経過を私は知りません。
私がイタリアに住み始めてから今日に至るまで、イタリア人によく質問される話題の1つが、宗教です。
カトリック教の総本山であるバチカン市国をローマ市内に持つイタリア。
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イタリア人にとってカトリック教は、生まれてから日常生活に密接な関係を保ち、人生のお供をしています。が、イタリアはヨーロッパ諸国と陸続きな上に、近年においてはアラブ やアフリカからの移民入国が増える一方で、イタリア人の生活には大きな変化が起きています。それには、しばしば宗教の違いも関わっていることも少なくありません。
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ラマダンの時期に入る前には、領事館から注意事項メールが届く様になりましたし、イスラム教徒を労働者として雇っているイタリア人ボスは、ラマダン時期を念頭に入れない訳にはいかない、と言っています。
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それから、小児科病棟の長期入院の子供。アラブ人やインド人の患者が増えたイタリアの病院で、病院食どころかイタリア料理も食べ慣れていない子供の食が少しでも進む様にと、外国人の両親たちは自国料理を作るのですが、その料理の香りに慣れ親しんでいないイタリア人達には、強烈なのだそうです。
息子さんや娘さんを公立小学校や公立中学校に通わせているイタリア人のお母さんたちが言うには、クラスメートの半分以上が外国人。これも驚かされる事実の一つ。
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さて、日頃から様々な興味深い展覧会を行なっているミラノの展示会場MUDECに、先日行ってきました。今回は、「東洋の印象」と言うタイトルでジャポニズムについて掘り下げた展示とその横では、「日本がイタリアを発見した時」と言う展示です。
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日本がキリスト教の浸透を恐れた事、それゆえに起きた200年以上に渡った鎖国、開国後のカルチャーショックなどが、展示会を通して浮き彫りになってきます。
鎖国後の日本が受けたカルチャーショックと、開国のお陰で、それまでは想像ばかりであった日本の事物を目の当たりにした西洋が受けたカルチャーショックを想像すると、楽しくなりませんか?
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葛飾北斎の浮世絵を見たとき、ゴッホや、ゴーギャン、ロートレック、モネは、彼らの人生の中でも最高とも言える強烈な感動を得たに違いありません。見た事が無い技法、構成、表現法を真似したのでした。
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知りたくても知りようのなかった閉ざされた遠い神秘的な東洋の国、ニッポン。
出会いは、大事ですね。
そしてよく知る、という事も。