• 2020.08.18
  • 救われたチーズの王様のお話
ミラノから南方約120キロにあるパルマの町。

パルマと言えば、サッカーファンにはお馴染みの町。中田選手のパルマへの移籍が、日本人のパルマへの関心が高まった時期だったことでしょう。が、パルマという町に興味を持つ理由にはサッカーだけでなく、パルマの生ハムやパルメザンチーズの存在があるからなのです。

ここで一つ注意。

日本でよく知られているパルメザンチーズは、アメリカ生まれのクラフト粉チーズ。粉チーズとして知られているけれど、それを素っけなく説明しますと粉ミルクに塩を加えただけの物。

なのでパルメザンではなくてイタリア風にパルミジャーノと言えば、何かと誤解を避けられるでしょうか。このパルミジャーノは、イタリア人の食卓には欠かせない大事なチーズの一つ。長い熟成期間がもたらすこのチーズの風味は、作りたてのお料理に削ったパルミジャーノをかけると、味に広がりが出るのです。

「削る」と書いたのには理由があって、粉チーズとしても販売はされていますが、こだわる人は切り売りケーキのような形で分けられて販売されるパルミジャーノの塊を冷蔵庫に常備していて、下ろし金を使ってパルミジャーノを削り、出来たてのお料理にまぶしかけます。


立食パーティーなどでは、重量感満点の40キロのパルミジャーノの硬い塊がそのまま登場し、丈夫で短い専用ナイフが突き立てられていて、存在感と迫力に溢れ格好いい。各自一口サイズに切り削ってサーブするようになっています。それをそのまま口に頬張るのが普通で、 じゃりじゃりした食感から豊かな味の広がりが楽しめるものです。熟成し水分が吹っ飛んだ後に結晶化したものが、ザラザラするのです。


余談ですが、私はパルマによく行っていた時期があったので、パルマと比較してミラノのスーパーには通常、パルミジャーノの熟成期間が比較的短いものが出回っているように思いました。イタリア人に聞いてみると「パルマの住民はパルミジャーノ通だからね、短期熟成のものには見向きもしないから、パルマでは売れないんだ。」

なるほど、、、

ところで、2012年にこのパルミジャーノ生産地であるエミリア ロマーニャ地方はマグニチュード5.9の地震に見舞われました。死者や負傷者を出した地震の被害が報道されたものでした。そして、パルミジャーノの生産工場も大打撃。


工場から「助けてほしい」と言われた一流シェフ、バルビエリ。彼は、エミリア ロマーニャ出身の星付きシェフ。被害にあった60万個にも上る 例の重量感満点のパルミジャーノをどうやったら救えるかと彼は散々考えあぐねた末、彼は他の星付きシェフに声をかけ、「オペラ座のシェフ」という企画を作りました。招待客を招いて劇場で4人のシェフはパルミジャーノのレシピを紹介し、パルミジャーノを使って腕をふるってのご馳走を披露。その収益金でパルミジャーノ生産工場は奇跡的に回復できたのでした。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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