そんな違いからくる影響なのでしょう、何事においても団体プレーより個人プレーの方が得意なイタリア人。にもかかわらず家族間の絆は深く、時には激しい衝突をし、お互いの文句を言いながらもバランスをとっていっているように見えます。
南北に長く伸びているイタリア半島は、南北の違いがはっきりしています。その違いは気候によって左右されていて、習慣や考え方の違いにも顕著に現れています。南部イタリア人は、豊かな自然と食生活でゆっくりした日常を送り、数国と国境を交えている北部イタリア人はクールな表情で職務に励んでいる、という姿が大雑把な印象です。
さて、北部イタリアの中心とも言えるミラノ 。小さな”大都会”で一年中働いたミラネーゼも夏のバカンスは欠かせません。夏のバカンスは1年の重要イベントで、ゴージャスなバカンスをするために高利貸しを使ってバカンスのローンを組んだりする人達も多いそう。この金銭感覚には驚かされます。
今年の夏は、ミラノからヴェネツィア方面に車を走らせ、さらにはヴェネツィアを通り越してスロヴェニアと国境を接している北東に進むとグラードという人口約8千人ほどの海岸町に行ってみました。この観光地の特徴は、潟と温泉。グラードの町は5、6キロに渡る長い橋が陸地側とやっとつながっている孤立したような島。グラードの町を遠くに眺めながら海水浴を楽しもうと陸地側の海岸に行ってみました。温泉臭い潟で泳ぐなんて私には考えられない発想なのですが、人生で一度っきりの経験だと思うと試してみたくなるものです。
感想は、一度っきりで十分。
景色は、ごく普通の海岸。でも、砂地から海の沖へと海水の中を歩いて行くと、ある地点からドロドロした冷たい泥がヌルリ ヌルリと足をすくい始め、底無しの泥の中に溺れて行くような不気味な感触。一歩一歩に悲鳴をあげながらも怖いもの見たさの性分で先に進んで行くと、とある地点から海は深くなるどころか浅くなるばかり。歩いて底無し沼に呑まれる感触か、体を浮かそうにも浮かせられないくらい浅い海で浮遊するか、選択に困るような可笑しな場所でした。
グラードの特色は、潟の他にもう1つ。それは、感じの悪い住民。サービスが行き届いてない不便さと物価の高さに加えて、受け答えの悪いさ。イタリア人特有の無造作な対応に慣れっこのミラネーゼにでさえ、嫌なやつらと言わせるくらい。観察の結果、グラードの住民は観光客を苦手としているのでしょう。グラードの町は小綺麗でよく整備されていて、観光に頼る必要無く住民らは満足的なレベルの生活を送っているように見受けましたので、グラードの平穏な日常を覆すよそ者を敬遠しているのかもしれません。