• 2022.07.27
  • マグロ漁
美食の国の1つとして世界に名を轟かせているイタリア。恵まれた気候や地形や土壌によって生まれた技術や調理法などで、イタリアの各地には外国人が感嘆する地域の食材や料理が溢れています。

その反面それともその影響と言った方がいいのでしょうか、イタリア人には食に関して保守的で、イタリア料理しか食べられないと言う人の多い事。

そんなイタリア人が食に関して保守的である事は、意外な気が一瞬するものですが、イタリアで食事をしているうちに納得させられるのではないでしょうか。

さてイタリアの漁港で日本人の魚好き、それも生魚好きは早くから有名でした。何故なら、シチリア島海岸とサルデーニャ島海岸でのマグロ漁で獲れるマグロを買い込んでいたのは日本人。日本への輸出量が圧倒的に多かったようです。それも、イタリア人が食べないで捨てていたトロに目を輝かして残さず全部買い漁って行くので、イタリア人には妙だったらしい。生魚ばかり食べて、マグロの色の薄くて不味そうな部分を欲しがる変な民族に見えていたらしい。

10年ほど前までは、このマグロ漁(イタリアではマッタンツァと呼ばれる)が観光ツアーに組み込まれ見ごたえ抜群だったので大層な人気を得ていたとか。海中に仕掛けておいた網に向かってマグロを追い込むように、4隻の舟、それも決して大型漁船とは言えない舟が4方から網に向かって距離を縮めて行き、囲みながらマグロを閉じ込め、と同時に網を引き上げていき、海面にマグロの姿が現れてきたところを銛で刺してマグロを漁する方法です。舟で囲まれた海が真っ赤に染まるので、死の部屋と呼ばれているとか。舟の上で漁師たちは体のバランスを保ちながら、4隻の舟と共に見事な連帯プレーを発揮する古代から伝わる漁業方式だそうですが、命を落とする漁師もいるほど過酷な漁なのだそうです。危険を伴うことから、観光ツアーからは外されてしまったくらいです。近年、マグロの数が減ってしまったことから、マッタンツァを行わない年が出てきて、この伝統も廃れつつあるとか。


さて、イタリア人は生魚を食べる習慣が無いのか、と言うと実はそういう訳でもないのです。南イタリアのプーリア州では海岸線に新鮮な魚を揃えた魚屋さんが並んでいて、市民はお魚を買ったら、そのまま目の前の浜辺で昼食を始めるのだとか。つまり、新鮮なお魚の内臓などを取り払って綺麗にしたら、後はレモンをかけて、そのまま頂くのだそう。プーリア州の魚の新鮮さにかけて、さらにはその食事スタイルのイージーさは、特に刺身文化を持つ日本人には、たまらない経験であることが想像つくでしょう?


あー、たまらない。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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