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  • 2023.06.01
  • 小さい独立
イタリア国内には、少なくとも2つの独立国家が存在していて、それは一国で成り立つ島国の日本から来た私には、とても不思議な現象に見えるのでした。

入国審査は不要で気がついたら入国していたという次第で、使用言語はイタリア語、通貨もユーロ。でも言い換えれば、そこは一応「外国」なのです。

例えば、世界で一番小さな国と呼ばれるバチカン市国。


ローマ市内の一角に存在し、たったの0.44平方キロメートルの土地の国。一国であるにもかかわらず大統領もいなければ首相もいないのですが、その代わり教皇が存在します。なぜこんなにも小さな国が誕生したかと簡単に言うと、イタリア国王を含めイタリア政府と旧時の教皇の不和と断絶が続いていたところ、怒って引き篭もっている教皇の場所を教皇の国にしたらいいでしょう、とムッソリーニ首相の提案が打開策として受け入れられ、そこから一気に関係が改善されて、世にも不思議な世界最小の国が生まれたという経過なのです。

さて、もう一つの独立国家は、サン マリノ。

こちらは世界最古の共和国。こちらも、パスポートの提示不要なので入国した手応えは無しに、連続するカーブの車道を登っていくと、ティターノ山の断崖に作られた旧市街に辿り着きます。この国の特徴は税金がかからないので、高い税金のタバコなどタックスフリーでお買い物をしにイタリア人が訪れるのだとか。山頂にある国であることから面積の広さがおおよそ推測つくように、バチカン市国ほど小さくは無いにしろ、それでもたったの60平方キロメートル。ローマ皇帝によるキリスト教徒迫害から逃げたマリノという石工とその仲間たちが立て籠もったこの断崖で、共同体を組織して生活を営み始めたことが、サン マリノ共和国の誕生だとか。現在でもたったの3万4千人の人口だそうですが、共同体誕生時には数十人だったに違いなく、にもかかわらず独立国家と認められたなんて、奇異な歴史をもつ国だと思いませんか。経緯を知らないのですが、サン マリノには日本の神社本庁が認めたヨーロッパ初のの神社が建てられています。2011年の東日本大震災の犠牲者のために建てられたそうで、西洋では神道についてはあまり知られてはいないのですが、神道の特徴の一つが大変慎み深い精神の哲学であるとサンマリノ神社では説明をしています。

リグーリア州にあるセボルガは、独立国を宣言して強引にセボルガ公国と自称しているのだとか。私が訪れた際はそんな歴史を知りもせず、リグーリア海からなだらかな車道を5、6キロ登ったところで石畳の小さめの石が美しく敷き詰められた中世の「村」にたどり着いて感嘆した記憶が。結局、宣言しても独立とはそう簡単には認めてもらえないもので、セボルガ公国は自称公国で留まっているのだそう。

セボルガ公国よりももっと強烈なのが、独立国では無いにしろトスカーナ州にあるマプスロンという地域。マプスロンの誕生や歴史はともかく、車の通行を禁止し、それゆえにアスファルトは取り除いてしまい、砂埃が舞い上がる砂利道だらけ、テレビ番組の放映内容のレベルの低さが悪影響を及ぼすという事で、テレビが見られないようにしてしまったとか。

探せば探すほど、独立または独自の共同体のような地域が出てくるのがイタリア。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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