そうそう、トマト。
イタリアを訪れたことがある人ならば、スーパーや店頭に並ぶトマトの豊富な種類に気がついたことでしょう。どれも甲乙付け難い美味しいトマトばかり。
その中でも、切ってもジューシーな汁が溢れ出てこないので新鮮な驚きがあるこのトマトは、名前が強烈で牛の心臓というネーミング。牛の心臓はこんな感じなのかぁと思いながらかじると、ジューシーでないだけあって他のトマトとは違う食感。しかも時々、色合いの良くないこの牛の心臓トマトにも当たってしまって渋々と食するのですが、食べてみるとトマトの味が口内にいっぱいに広がって美味しいもので、本当に不思議なトマト。
他にも、大抵のスーパーで見つかる手軽さが信じられないくらいの質を与えてくれる種類があって、シチリアのヴェズヴィオ火山が産地のPizzutelloと言うトマト。もぎたてのトマトが発する、あの独特の香りが楽しめる最高のトマト。
自家製トマトソースに作るのに適しているよと言われるのが、楕円形型の長めトマトでSan Marzanoという種類。南イタリアのカンパーニャ州が産地。煮詰めても形が崩れないので缶詰トマトとして売られて重宝されています。これを煮込み料理などに使うと、程よい大きさにトマトが形を留め、見た目にも食感も美味。日本でも見かけるのではないでしょうか。
世界には8000以上を超えるトマトの品種があるとされ驚かされます。最近は赤いトマトだけでなく青、白、黄色などカラフルなトマトが出回っていて、これらのカラフルなトマトを置いただけでも食卓がパッと華やかに。
ところで、トマト尽くしのイタリア料理にも関わらず、イタリアにトマトが普及したのは、意外にも最近のことなのです。イタリアでのトマト到来についてわかりやすく説明してくれるのが、パルマの町に作られたトマト博物館。トマトは、南米が発祥地だそうでメキシコに渡り、それからスペインに運ばれ、その後イタリアにも到来しました。が、到来当初に具合が悪くなる人が出たのか、有毒とさえ言われたようで不信感が募ったのか、観賞用とか飾り、または薬用植物として普及しました。一説によるとトマトによく似た有毒性植物と間違われたことから起きた混乱だとか。私が想像するには、食べたことが無い物が体内に入ってきて、祖先から続く長期間に基づいて、遺伝的にそれを消化する機能が発達していなかったのではないか、それゆえに消化不良を起こしていたのでしょう。
その消化不良のせいで、きっと貴族の間などで観葉植物として贈り物としても使われたのではないでしょうか。食するようになったのはたったの200年前。
ところでイタリア語では、トマトをポモドーロと呼ぶのですが、トマトとポモドーロは実は正確さを追求すると種類が違う植物なのだそう。ポモはラテン語でリンゴ、オーロは黄金。
つまり黄金のリンゴ。