• 2023.10.06
  • ナポリを見ずして死ぬことなかれ その2
イタリアの土壌と気候が魅力的なのは今現在もそうですが、紀元前からこの恵まれた地形で人々は豊かな生活を育むことが出来ました。とりわけ注目すべき点は、高い文明を持つギリシャ人が到来、高い技術を持つエトルリア人の到来、そして更に発展させて行った1000年のローマ時代。

これらの経緯を見ることができる町の一つに、ナポリがあります。しかも、実に面白い見学コースがあって、それはナポリの紀元前から今日までの経過を垣間見ることができるナポリ旧市街にある地下都市。このナポリの地下見学ツアーには、幾つか種類があってどれも満足感がいっぱいになる体験に仕上がっています。

ナポリの地下には、規模といい、歴史、用途、発展には驚きが埋め尽くされているのです。

ギリシャ人達は、ナポリを新たな開拓地として選びネアポリス(新しい都市という意味)と呼んで、町作りを進め寺院などの建設用にTufo呼ばれる凝灰石を掘り起こして行きました。この凝灰石とは火山灰などが凝結して出来た岩石で、加工がしやすいことから建設にぴったりな石である訳で、と言うと或る有名な山の名前が出てきませんか?そうなんですよ、ヴェスヴィオ火山が町からたったの9キロの場所にある事に頷ける石の種類ではありませんか。採掘に採掘を重ねて城壁や劇場などを建設して町を作り上げ、一方掘りに掘られた地下は倉庫や埋葬に利用しました。

ギリシャ人はエトルリア人と深い交易をしたそうで、ナポリでもエトルリア人の痕迹が面白く見学できるのが、ナポリから23キロの距離にあるあの有名なポンペイ遺跡。

さて、ローマ時代のナポリ。ローマ皇帝が行った画期的な事業の水道工事は、ギリシャ人が掘ったナポリの地下を利用する事によってナポリでも水道を整えられる美点として、どんどん掘り進めてナポリから70キロも離れた源流セリーノから水を引いたのがローマ時代のナポリ。イタリアの中では、最新の地下水道システムを持っていたのが古代ローマと古代ナポリ。

水道システムを点検、整備する人が歩けるように壁沿いにかべに張り付いて歩けるような通路も考えて設計されていたり、水質検査用に泥鰌を泳がせておいて、泥鰌が死んでいたら水が汚染されたとみなして、貯蔵水を変えてきれいな水を貯め直したりと、そのアイディアと技術の高さには唖然とさせられます。

このようにこの地下は時代によって手が加えられ、用途が変わって行くのですが、第二次世界大戦中にも注目すると、防空壕として活用されて、できるだけ多くのナポリ市民が避難できるように設備が整えられた跡が残っています。そして、この防空壕のおかげでイタリアの中でナポリが一番爆撃を受けたそうですが、一番生存者が多かった町がナポリなのです。

が、この利点には弱点のおまけもついてきて、その後コレラが流行って、その蔓延は他にはないスピードで、コレラによる死者はイタリアのトップを争う数に上ったとか。

ナポリの歴史は、魅力にあふれ、書き切れないほどの事柄や歴史に溢れ、まさに『ナポリを見ずして死ぬことなかれ』と謂れが存在するのがわかってもらえるかしら?


今回は、ナポリの地下も見ずして死ぬことなかれ と言うべきかも。そうそう、地下見学は、40メートル地下に降りて、閉所恐怖症には辛く途中で断念するほどの、壁につっかえるかのように挟まれるような状態が続く通路を歩くのですよ。灯も無いところもあったりして、、、スリル満点の冒険でもあります。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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