• 2023.11.06
  • 洞窟の女王様
カプリ島といえば、青の洞窟。「青の洞窟に入れたぁ〜!」と感激して帰省した人に出会ったことはありませんか。そうなのです、なかなか入れないのです。それには、いろいろな要因が絡んでいるのですが、まずは青の洞窟とは、どういう所なのでしょうか。

洞窟に入るための入り口がとても小さいのです。



水上から高さ1m、幅2mだけの穴なので、水位が高くなると入り口は海面下に隠れて見えなくなります。一方洞窟の中は、天井は高く、おそらく海面上10mくらいはあるでしょう、奥行きもたっぷりあって中は広々としています。真っ暗な天井と壁面とコントラストをなすのが、蒼く光る水面。水中の穴から洞窟内に差し込む光が白い砂の海底と水を照らして、神秘的で幻想的な色合いを作り上げるのです。


たった5分間足らずの見学しか許されない青の洞窟。見学には、まずは天候に恵まれる幸運が必要で、さらには長蛇の列で待機させられるので沢山の辛抱、クルーズ船から小舟に乗り移ったりとかなりスポーティーな感覚も必要で、運と時間と労力のどれも欠かせられないハードルの高い特別なスポットです。


クルーズ船上で待機していると、待機している数々のクルーズ船の間をうねってやってくるのが、極小サイズの手漕ぎボート。たった2、3人しか乗れない小舟。その極小ボートの座り心地の悪いのなんのって、とあがき苦しんでいる内に、洞窟入り口前に連れてこられます。そこにはキャッシャー用の船がプカプカと浮いていて、入場料を払うのですが、たとえ波が荒くもない日でも、自分のボートの揺れとキャッシャー船の揺れの狭間でお金のやりとりなんて、至難の技のように素人目には見えるものです。

お金を払ったら、この乗り心地の悪い極小ボートで、いざ洞窟入り口へ。期待感に満ち溢れてウキウキするのも束の間「船のへりよりも体勢を低くしていて下さい」と手漕ぎ人が言うのです。船底に寝そべってくれと言われているようなもので、窮屈で身動きが取れないような極小ボート上で何とか寝そべろうとするものですが、なかなかうまく行きません。大体、この極小ボートの船内や船底がどんな風になっているかも分かる暇も無く、この小舟に飛び移ったのです。自分の体勢を整える間も無く、人生で最高の経験をするであろうのその直前の心の準備をする暇も無く、思ってもみない色々な工程がどんどん進んで行ってしまって、自分がどこかに置いてきぼりになっているかのような感じ。

波に揺られながら、洞窟から出てくる他の小舟や波の動きなどを観察している手漕ぎ人。タイミングを見計らっているかと思ったその瞬間、体を小さく屈めたかと見えた途端に、洞窟の入り口をひょいと潜って、波に押されるかのように洞窟内に小舟を滑り込ませます。

「座り直していいよ」と言われて起き上がった時に、視界に入ってきたのは、息を呑むような美しい光景。人生で1番感動したと言っても過言ではない強烈な空間なのです。


手漕ぎ人の洞窟に関する説明も上の空で、自然が創り上げる不思議な現象に恍惚としていると、もう退出時間。再び船底に寝そべらされて洞窟外に出るタイミングを待っていると、外からザブーンと押し寄せてきた波をかぶるおまけ付きでした。

青の洞窟に入るために、日によっては1時間半、時には2時間も待機するのですが、陸地の小道を伝って洞窟入り口にたどり着いて待機する人はともかく、クルーズ船で来た場合は、舵を取り続けて待機する船乗りたちも、かなりのストレスを強いられる様子。それでもって入れなかったりする事もあるのですから、、、


岸壁と絶壁で出来ているカプリ島には、洞窟が他にも沢山あって、島を一周しながら白の洞窟、緑の洞窟、ハートの洞窟などなど色々な洞窟巡りを楽しむことが出来るのです。



が、どの洞窟も青の洞窟には及ばない、、、

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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