• 2024.08.01
  • ジェンダー
先日、ミラノで学校教師をしているイタリア人から聞いた話。受け持ちの生徒の中に、イジメの対象になっている女学生が1人いるので、学校関係者と母親との面談が行われた際に、お母さんが「私の息子は」と言い始めた事から、学校関係者は混乱しました。

このお母さんは男の子を産んだようですが、この子は成長するに従って、自分を女の子だと言うようになり、今日に至っては「私の名前はエリカ」「今日は、私はヴァレンティーナ」と言う風にアイデンティティーを毎日の様に変えるのだとか。

前髪を長く伸ばして顔を覆う様な髪型で、常に俯いた様子もあって、先生を含む学校関係者は猜疑心を持たずに女の子だと思っていたそうです。

最近のイタリアでは、ジェンダーについて公の場で議論が交わされる機会が多くなりました。

思えば、一昔前までは、社会人になって自立した時点で、自分のジェンダーに確信をもち、女装をする男、又は同性愛者である事を表明するケースが多かった様でした。今では、中高生の子供達が、自分の複雑な性自認を表明する時代になった様です。そんな青少年の間で、ごく普通に使われる単語が、LGBTQIA。

Lは、Lesbian。
Gは、Gay。
Bは、Bisexual。
Tは、Transgender。

ここまでは、私は把握していたのです。この先が、ここ数年の新境地。

Qは、Queer。短直に言うと、考え中の人。
Iは、Intersex。男又は女と言う定義に当てはまらない人。
Aは、Asexual。短直に言うと、特定の性別の自認が無い人。

さらには、パン ジェンダー(Pangender)も、よく聞く単語です。
Panは、短直に言うと多様で流動的な性自認の人らしい。

世の中には様々な人種が存在していて、指向、行動、習慣などが色々違っているゆえに複雑なのですが、性別は2種類だと思って生きてきた私に、ジェンダーに関する未知の世界が目の前に現れたのです。

難しい時代です。

私と同じ様に、こんなにも複雑なジェンダー構造を知らないで生きてきた学校関係者は、生徒の悩みを理解することに苦労しています。つまり、相談に応じたくても応じられないのです。

ミラノでは、近年、Milano Prideと言うジェンダーを讃えるイベントを毎年開催する様になりました。イタリア全国のみならず、海外からの参加者を引き寄せる大々的イベントとなり、街中にはこのイベントのシンボルとして虹色の旗が掲げられ、町全体で多様性ジェンダーを支持する姿勢を見せています。このデリケートなテーマを取り上げ恒例イベントを開催するミラノは、ジェンダー プライドにおいて世界最先端を行っている革新的な町の様に見えますが、矛盾する面も多く、実際には市民の間には保守的思考が強く同性愛者やジェンダー多様性に倒して不寛容な言動も多く見られるのも事実。

更には多くの企業がこのイベントをサポートしている一方、それがマーケティング戦略とも見做され、このジェンダー プライドへの支持が表面的だとも批判されています。

いずれにせよ、今、多様性ジェンダーを自認する子供たちと、それについて見識のない大人社会の狭間が浮き彫りの時代なのです。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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