• 2025.01.17
  • ピサ
イタリアの事をよく知らない人でも、ピサの斜塔と言えば傾いた塔の写真を見たり聞いたりした事があるでしょう。倒れかける塔を支えるかのようなふりをしたポーズなどユニークな写真撮影ができるスポットです。というのはピサの斜塔が立っているのは広々とした緑の敷地で、それゆえに遠近感覚を利用して57メートルの高さの塔を自分の背よりも低く見せたりといったように遊び心に富んだ撮影が出来るのです。

塔が傾き過ぎて崩れ落ちないようにするために何度も工事が施されたにも関わらず、完全に垂直に戻すのは無理らしく斜塔は斜塔のまま。でも、塔が立っている場所が奇跡の広場とネーミングされた名前のお陰もあるのか、これから300年は倒れないでしょうと言われています。

年月が経ってから地盤沈下が起きて徐々に傾いてしまったのかと思っていたら、なんと塔を建設中に既に傾き始めてしまって、つまり土壌調査が不十分だったか怠ったかで、建設し直しもできない所まで建設が進んだ時の事件らしい。仕方がないので垂直に持っていこうと試みたらしいのですが結局失敗で、傾いた塔のバランスをとるために頂上の部分だけは、垂直に作られた所が何ともイタリアらしい発想ではありませんか。


そんな斜塔を見るためだけでもピサに行ってみたいと思わせてくれますが、それ以外の面でも面白い町なのです。というのは、11世紀から13世紀にかけてのピサは、イタリアの4大海洋共和国の一つとして繁栄したのです。ということは、残りの海洋都市ジェノヴァ、ヴェネツィア、アマルフィと対等だった。

でも、ピサだけは何かが違うのです。実際にピサの町に行くと海の姿も匂いもせず、言われなければ海がそばにあることさえ気がつかないような不思議な風土。海岸まで10キロという思ってもみない距離があるのは確かですけれど。

そして町の真ん中を流れるのはアルノ川。パリのセーヌ川沿いのような豪華絢爛な雰囲気は無いにしても、アルノ川沿いは優雅でどの建物もさんさんと照らす日光を浴びて輝いています。そんな輝く建物を眺めながら川沿いを散歩すると、ピサでの優雅な架空生活の想像に誰もが浸るのです。

ピサは、ライバルの一つであるジェノヴァとの戦いに破れてから衰退の一方で、今となってはイタリアの中では小さい町の一つ。にも関わらず鉄道もあり、海あり、川あり、農村ありで、更には中心地から5キロ足らずに飛行場まである。まさに無いものは無い。

小さいながらもなんでも揃っているピサの町のアルノ川沿いに暮らす夢想をしていたら、現在のピサは学術都市として世界的に有名で、特に物理学や工学分野が高い評価を得ていて、川沿いの素敵な建物はほぼ全部が学生寮なのだ、と説明を受けました。

まぁ、なんて優雅な学生生活!ピサの大学生、お勧めですよ。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

三上 由里子の記事一覧を見る

最新記事

  • 2025.01.17
  • ピサ
  • ミラノ( イタリア )

おすすめ記事

リポーター

最新記事

  • 2025.01.17
  • ピサ
  • ミラノ( イタリア )

おすすめ記事

PAGE TOP