それでもミラノだったら、ドゥオモの真横にリナシェンテと呼ばれる老舗のデパートがあって、8階建ての歴史的なその建物は、まるで観光名所の一つのような貫禄があります。リナシェンテの他には、庶民的なデパートのコインというのもあります。こちらは、ドゥオモの真横ではなくて同じ中心地でも少々外れた中心地に位置し、歴史的建造物の店舗ではなくて、新しい斬新なイメージを狙っています。
リナシェンテやコインに入ると1階は化粧品売り場で、つまり日本のデパートの1階と雰囲気が似ていて、デパートはどこの国でもこんな感じなのかな、と思うのですが実際の所、それ以外はあまり共通点がないのです。例えば、地下に下りて行っても、日本のデパ地下のような賑やかで活気ある食料品売り場にはなっていません。食材に関しては基本的にスーパーや市場で買うことがイタリアでは定着していて、リナシェンテやコインにおいての食品売り場とは、片隅に遠慮がちに設置してあり、その他どの階もファッションやアパレル、生活用品が主となっています。
最も大きな相違点は、下着売り場。コイン デパートに初めて足を踏み入れた時の私の驚きは、下着売り場が丸々1フロア全体を占めていることでした。その事から、イタリア人にとって下着は単なる実用品ではなくて、美しさを追求したファッションなのだという事が理解出来たのですが、友人や同僚の話から、パートナーへのプレゼントとして男性が下着を選ぶことがごく普通に行われ、贈り物としての需要も高いこともわかり感心してしまいました。確かに、デザインも豊富で、洗練された物が多いです。
実際に、イタリアではテレビのコマーシャル、広告、雑誌、ショーなどを通じて、下着のセクシーさとエレガンスさを強調していて、消費者の購買意欲を高めています。日常的に使いやすいものから特別な日に身に着ける高級品まで、用途ごとに選べてバリエーションに富んでいるのも魅力。イタリア国内には多くの下着ブランドがあって、その多くは世界的にも知られているブランドにもなっていて、女性が下着を選ぶ時間を楽しむ風潮がよく伺えます。イタリアの女性は、年齢を重ねても自分磨きを怠らなく、下着に関しても自己表現の一つとして、色や素材、デザインにこだわって、自分自身を楽しむ文化が根付いているように思えます。
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ところで、新年の際には赤い下着を身に着ける習慣があるのも面白く、年末のデパートや下着店には赤いランジェリーが大量に並び、それは、女性用だけでなく男性用でも同じで、というのは新年に赤い下着を身に着けると幸運を呼び込むという伝統があるからです。
新年にイタリアに来る時は、赤い下着をお忘れなく。
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