実際、あるメディアでは「イタリア国内のトップ10スタートアップのうち8社がミラノに拠点を置く」と紹介されており、街を歩けば、カフェでノートパソコンを開く若い起業家たちの姿が、当たり前の光景になりつつあるようです。
国際的なデータを見ても、イタリアのスタートアップ・エコシステムは確かな進化を遂げています。ヨーロッパ内ではテック・エコシステムとして「上位10位圏内」の国にも含まれてきており、欧州での存在感は確実に高まっています。
こうした国際比較のなかで、ミラノのスタートアップに「傾向」も見えてきます。イタリア国内では エドテック(教育テック)や消費者向けサービス のスタートアップが比較的多く存在しており、エドテック分野で世界ランキング5位以内という指標も出ており、教育×デジタルという領域が強みのひとつとも言われている点が私の興味を引きます。
また、最近の建築物やエリアを観察すると、環境・サステナビリティとの結び付きも見えてきます。「グリーン的な生産プロセスを山城とするスタートアップほど生き残り率が高い」というデータも報告されており、たとえば再生可能エネルギー・環境テック領域を意識したプロジェクトや起業が、世界の動向と並んで国内でも支持されつつあることがわかります。
日本のスタートアップ環境と比べてみれば、国土・人口・資金量で見劣りする部分がある一方で、「デザイン・ブランド・文化資源を背景にしたエンタメ・教育・サステナビリティ領域の起業」が比較的多く育っているという点では、間接的で隠れた強みがあるとも言えます。
もちろん課題もあります。世界のトップ・スタートアップ・エコシステムと比べると、イタリアはまだ追いかける側という立場にあるのも否めません。例えば「制度・税制・起業支援の手続きがもっとシンプルになるとさらに成長が見込める」という指摘も出ています。
それでも、ミラノという街の雰囲気を味わえば、スタートアップが「絵になる」場所であることは一目瞭然です。歴史ある街並みにスタートアップ・カフェ、複数のコワーキングスペースが若い起業家たちを迎え、共存しています。この空気こそが「アイデアを現実に」という原動力になっているのでしょう。
そして今、世界のイノベーションの流れが、教育×デジタル、環境×テック、ブランド×サービスといったように、広い意味での生活価値向上へと移行しているなかで、ミラノ発のスタートアップがこの波に乗ろうとしている姿は、注目すべき動向です。
スタートアップの都・ミラノが、ヨーロッパに進出、そして世界に向けて何を出してくるのか、楽しみではありませんか?
