シドニーのセントラル駅からは、ブルー・マウンテンズの各村へ行く電車が数時間おきに運行しています。
シドニーからブルー・マウンテンズまでの所要時間はだいたい2時間。この短い時間でドラマチックに変化する景色は見ものです。高層ビルもバスもトラムも消えた視界に広がるのは木、木、また木という別世界。遠方にはUNESCOの世界遺産に指定されている砂岩の「スリー・シスターズ」が、まさに自然の一大スペクタクルと呼びたい迫力で姿を現します。
中でもいちばんの眺望を楽しめるのはエコー・ポイント。ここから独特のパノラマ景観が望めます。
かつては山脈であったブルー・マウンテンズですが、現在はいくつかの自然保護区や公園からなる台地と言うべきでしょう。独特の地質学的な構造のおかげで、ここはたくさんの種類の動物や植物が保存されてきました。
実際にここを訪れるまではただの観光名所ぐらいに考えていたし、ブルー・マウンテンズという名称だって人の気を引くために付けたんだろうな、なんて思っていた私ですが、実際に足を運んでみたら、この名が付いた理由も納得できました!
それをさらに実感させてくれたのが、上空から眺めたその景色。上から見下ろしたときに山々が青みを帯びているのは、大量のユーカリの木から出るユーカリプタスオイルのなせるわざ。ユーカリはこの地域一帯では最も多くみられる植物で、その種類は90を超えるそうです。
ブルーに染まる景観、そして森や渓谷のあたりには、周辺の色を目に見えるほどにはっきりと変えるほど青みがかった大気が漂っています。
ここにはまた、ラクちんな初心者向け(平坦で短距離)からハードな上級者向け(眺望が最高)まで、ハイキングコースも豊富にあります。
この保護区を代表する観光名所と言えば、それはカトゥーンバ。駅を出れば、ハイキングコースや無数の絶景ポイントを通る公共あるいは観光用シャトルバスがいくらでも走っています。だからこそ、私たちは敢えてブラックヒースに行くことにしました。ここは観光客も少なく、サービス施設もそれほど充実しておらず、ややこしくて骨が折れるけれど、それだけの価値があります。最高に感動的なハイキングコースがあるという情報を電車の中で読んでいた私たちは、泊まる宿もそこで見つけることができました。
私たちが泊まったのは、至る所にモクレンの花が咲く庭の眺めが素晴らしい、居心地満点の部屋でした。この時期としては珍しく、12℃から19℃ぐらい(これより高くはならない!)の気温で過ごしやすさも言うことなし。春の陽気があたりの花々を咲かせ、絵の具のパレットのようなカラフルな眺めを楽しませてくれました。
あふれる光のバリエーションとニュアンス、光の強さのなんと素晴らしかったことか!この村のとてもこじんまりとした単純素朴な雰囲気に比べると、カトゥーンバは明らかに観光客向けの町です。とは言いつつも、いくつかの店、ビールを楽しむ地元の馴染み客でにぎわっている、界隈でただ一軒のパブなど、いい感じのスポットもありました。
この近くには、巨大なシダや見上げるほどの高さのユーカリ、セコイア、深い渓谷や滝に囲まれた古代からの熱帯雨林があります。
公園は3つのエリアに区分され、それぞれに異なる見どころがあふれています。
何といっても必見なのが、260mの高さに浮かぶ、大きな黄色のケーブルカー、スカイウェイ。床がガラス張りになっているので、ブルー・マウンテンズやスリー・シスターズ、カトゥーンバ滝の眺めを360度楽しめます。
空ではなく地上の道を選ぶなら、自然の恵みを味わいながら歩けるコースが充実したジュラ紀の熱帯雨林の歩道がおすすめです。ちなみに私が選んだのは2.5㎞の最長コースで、素晴らしい眺めを堪能することができました。
旅客鉄道としては世界一の急勾配を誇るトロッコ、シーニック・レイルウェイもあります。52度という傾斜は、冗談でもなんでもなく急で、2つある岩石の近くを降りる時や熱帯雨林に差し掛かると、シートにしがみついているのもひと苦労。アドレナリンの放出を実感できるという意味でも、一度はこれに乗ってみることをお勧めします。
ブルー・マウンテンズのフォトギャラリー: