シドニー市内の多くの名所と同じく、この博物館もダーリング・ハーバーにあり、特に航海術に高い関心を持つ人に向けて作られた施設です。
館内では、海軍や太平洋を横断した船、ヨーロッパ人がオーストラリアに初めて足を踏み入れた時代まで遡った遺物にまつわる展示や情報に触れることができます。
一方、屋外には復元された歴史上重要な船や古い船舶がたくさん展示されており、見学者は実際に乗船して水上生活をリアルに体験できたりもします。
この博物館は、常設展や企画展を通じて、オーストラリアの過去と現在に関わる民族やモノ、場所を繋ぐこの国の海運史を、人々と分かち合うことを狙いとしています。また、博物館前のマリーナには同館が所蔵する世界最大規模を誇る歴史的船舶のコレクションが並べられており、その中には有名なキャプテン・クックのHMBエンデバー号を復元した船もあります。
この復元船がオーストラリア沿岸を定期的に航行し、オーストラリアに住む人々や小中学生たちに、この重要な船や国の歴史の一端に直接触れる機会を提供していることを説明書きで読んだときは、何て素敵なんだろうと思いました。
キャプテン・クックをオーストラリア大陸発見に導いたエンデバー号の瓦礫が発見され、それをもとにこの船が復元されたのだそうです。
オーストラリアのアボリジニ族と海との深い絆から大陸の最初の探検に至るまで、20世紀まで続いた海からの移民から今日まで受け継がれる海運業まで、また、今なお防衛上の要であると同時にオーストラリアのアイデンティティでもある海の役割などなど、常設展と企画展、オンラインで一般公開されている所蔵品のどれも、オーストラリアと海との密接な関わりを探り教えてくれるものばかりです。
オーストラリアとその周囲の海の数世紀にわたる歴史を、老いも若きも驚きとともに楽しく学んでもらうために、博物館では魅力的な遺物や展示品、面白いアクティビティを用意しています。
ここは、海の生物を展示する自然史博物館のようにもなっているので、オーストラリア沿岸の海に住む生き物たちについて、詳しく知ることができます。
メインホールには天井から吊り下げられている動物たちが何匹かいて、最初、少し違和感をおぼえます。まず、海の生き物が「飛んでいる」から、加えて「ぶら下がっている」体勢がちょっと不気味だから、そんな印象になるのでしょう。
それはそれとして、博物館の展示や音声案内、ガイドは、訪れる人たちにタメになり利用しやすいものとなるように最善を尽くして提供されています。また、海洋生物に対する敬意もひしひしと伝わってきます。
年間を通して様々な企画展を開催しており、誰でも必ず1つは特に面白そうと思う展示があるはず。主要な企画展は有料で、一つ一つの入場料を考えれば、複数の展示を見たい人には共通チケットの購入をお勧めします。
そういう私も先週末、この博物館に行ってきました。開催中の展示の中で最も興味深かったのは、“One Ocean, One Future”。様々な文書や画像、物が幅広く展示され、海の生物について、さらには海中の絶妙なバランスが私たちの生活にとっていかに重要かなどについて、これまで疑問に思ったことを何でも教えてくれます。
気候変動や魚の乱獲、化学物質などが、海洋生物の未来、ひいては私たちのこれからの生活にもたらす影響についても考えさせられます。
また、海の生態系や深海についても知ることができ、実際に触れてインタラクティブに学べる展示品や、3Dで再現された作品などが置かれています。