体験後、彼はパーマカルチャーとは何なのか、それがオーストラリアで一大ブームになっているのはなぜなのかについて少し教えてくれました。
講座で扱ったのはフィールド・デザインや、倫理、土壌と太陽と水、気候、地域社会など。
友達は所有している小さな土地をラボとして活用し、自然のメカニズムをより深く理解するための実験を行っていました。何か新しいものを作るたびに、それが実験的な取り組みだとは分かっていても、何をしているのか自分でもよく分からないと思い、この講座を受けることにしたそうです。
では、パーマカルチャーとは何でしょうか。
パーマカルチャーとは、エコロジカル・デザインのひとつの考え方です。
現在実践されているパーマカルチャーは、ここオーストラリアで始まったもの。その着想の源になったのが、森林や湿地など自律的な自然のシステムです。こうしたエリアは、豊かな生命を生み出し、廃棄物を再利用して土地を肥沃な状態にし、多種多様な動植物の暮らしを支えるという営みを自然に行っています。
パーマカルチャーという言葉は、「パーマネント(永続性)」と「アグリカルチャー(農業)」を組み合わせた造語です。農業は、再生と持続可能性を兼ね備えた営みなのです。
パーマカルチャーをひとことで説明するのは難しいけれど、その中心にあるのは自然と倫理と、耕作を行う際の選択をルール化した一連の原則です。
友達いわく、人に生きている実感を与え、「自分のため、人のため、そして世界全体のために何かしたい」という願望に火をつけてくれるのがパーマカルチャーなのだそうです。自然から完全に断絶された世の中で、パーマカルチャーは自然と再びつながり、あらゆる面から人生の意義を再発見して幸福を取り戻し、個人の価値観を見直すための手段だと言うのです。
全体像としてのパーマカルチャーは、労働力も時間も資源も節約しながら、より良いものをより多く収穫させてくれるものです。パーマカルチャーのメソッドなら、ガーデナーは何時間も作業を続けたり、有害な農薬や化学肥料を使ったりすることなく、満足感のある美しくて生産性の高い環境を作ることができます。
シドニー北部にあるこのエコビレッジは、環境分野における先駆的な取り組みを行っています。数区画をカバーする敷地の中にいくつかの小さな湖、農地や園芸用地、さらに森、広大な無人地域を擁しています。
計画段階で確認されていた最良区画は共有地とされ、誰でも立ち入れるようになっています。これがパーマカルチャーのビレッジで、地域経済が減速し始めた90年代にデザインされました。環境にやさしい開発計画の実施が可能だと判断した発起人グループが、関係当局に具体案を提出。集中的なロビイ活動と情報提供の末、地元機関にその計画が承認され、建設が始まったのです。
土地柄、ここは新しいライフスタイルに非常に敏感であり、またエコビレッジに定住するには至らず、都会に移り住んで周辺の衛星都市で少しばかり稼いでいる多くの人たちが、こうしたエコロジカルな話題に関心を示しています。周辺にはオーガニックショップも多く、地元の生産物が販売されています。
エコビレッジは、パーマカルチャーについて学べる場であるだけでなく、ヨガや養蜂、舞台演劇などについて語り合いたい人々が集まる場所でもあり、フィールド・デザインのワークショップやコミュニティミール、瞑想のグループ、キッズのプレイグループ、各種パーティといったコミュニティ活動の取り組みの場にもなっています。環境と調和しながら、自然の生態系がもつ安定性、多様性、柔軟性を備えた生産性の高いエコシステムの中で、すべての活動が行われています。
したがって、エコビレッジに求められる基本的なニーズも確認されています。空気に水、クリーンな食べもの、精神性の高い表現、社会的統合、やりがいのある仕事、安全な遊び、適切な住まいなどが挙げられます。また、ここには公用の土地がたくさんありますが、その大部分は自然生息地が占め、農地としては利用できません。でも、丘陵地や平原などの貴重な土地もあり、居住者は手頃な価格で借りることができます。