町の中心、洗礼堂と教会前の大クリスマスツリー。 11月の最終週あたりから、フィレンツェの街中はにわかにクリスマスの華やかさを増します。
趣のある旧市街の通りは趣向を凝らしたクリスマスイルミネーションで飾られ、昼間はもちろん夕食後、深夜までライトアップを眺めながら街を歩く人々で賑わいます。週末を中心に小コンサートや、クリスマスイベントなどが頻繁に行われるため、普段とは違う華やかさが見られます。
レプブリカ広場のメリーゴーランド。 1700年代の建物をスクリーンにライトアップショー。 フィレンツェ旧市街は街自体がこじんまりしており、1時間あれば街の端から反対側の端まで徒歩で歩ける散歩に向いた街ですが、このシーズンの街は普段ひっそり隠れている魅力的なお店や通りを、クリスマスデコレーションに導かれて発見できる楽しい季節です。
クリスマス気分を盛り上げるウィンドーディスプレイ。 人ごみで賑わう街一番のショッピング通りで、イタリアンデザインの気の聴いたショップやデパートを除いた後は、少しだけ歩いてアルノ河にかかる橋を渡って見るとフィレンツェの落ち着いた良さも発見できるはずです。ポンテヴェッキォからピッティ宮殿に抜ける道は観光の王道ですが、すぐ隣の美しい彫刻で彩られたサンタ・トリニタ橋を渡りピッティ宮殿に抜けるマッジョ通りからその先ポルタ・ロマーナに至る界隈も昔のフィレンツェらしさが残る素晴しい散歩コースです。
サンタ・トリニタ橋から高級服飾ブランドが立ち並ぶトルナボーニ通りの眺め。反対側の岸がマッジョ通り。ピッティ宮殿界隈は昔ながらの芸術家や職人の工房がまだ数多く残っている地区として有名ですが、高度な美意識と技を誇ったフィレンツェ職人の技は現在でも受け継がれ、家具、製本、額縁、革製品、ジュエリー、貴石モザイク、鉄工芸等の数多くの伝統産業の工房や店が軒を並べます。一方、マッジョ通りを歩いてすぐに気がつくのは、見事な芸術品で優雅な飾り付けがされたショーウィンドーが並ぶ事です。欧米社会で常に絶大な支持を得てきたイタリア芸術作品の売買で活躍し世界に名を馳せたフィレンツェの古美術商人達のギャラリーです。
小美術館のような店内。 各ギャラリーのディスプレイを見比べるのも楽しい。 街中の建物や教会が美術館のようなこの街ですが、美術館に置かれても全く引けを取らない名品の芸術品が実際に小さなギャラリーにて売買されているのには驚かされます。ショーウィンドー越しに除く室内は、優雅で格式を保った室内装飾、フレスコ画の天井やシャンデリア、家具調度の上には彫刻や絵画が整然と並びます。各ギャラリー個性が違い、美術館よりもプライベートな空間に圧倒されます。近年では時代の流れか、同通りに現代美術のオークションハウスもオープンし、古美術のギャラリーが徐々にモダン・コンテンポラリーのギャラリーに場所を譲り、古今のアートが共存する通りに生まれ変わって来ています。古典絵画の修復を職業とする私としては、この変化は少し寂しいのですが、若々しく洗練された次世代のフィレンツェの美意識が生まれるのを期待しています。
オークションハウスの下見会場。 コンテンポラリーアートのギャラリー。 フィレンツェはファッション、デザイン家具や小物、グルメ素材のみならず、最高級の芸術作品までが日常的に売買される驚くべき街です。選択肢はアイデアしだい。クリスマスの贈り物は決まりましたか?