その他にも、フランクリン・ルーズベルトなどの著名人が、かの有名なウォルドルフ・アストリア・ホテルへ地下から直接アクセスするのに利用していた秘密の地下鉄駅もあります。ウォルドルフ・アストリアは、セントラル・パーク前にある高級ホテルであり、ニューヨークで最も古い5つ星ホテルの1つで、これまで多くの要人をゲストに迎えてきました。この駅はもう数十年間利用されていないのですが、最近あるテレビ局がそこを訪れて制作したドキュメンタリー番組はとても興味深く、その中では、線路や車両、そしてホテル直結のエレベーターが未だ機能している様子が見られました。その昔、プライベート・トレインに乗ってやって来たホテルの客たちは、ペン・ステーションやグランド・セントラル・ステーションで乗り換えることなく、直接ホテルに到着し、スイートルーム直結の特別エレベーターを利用することができたのです。ニューヨーク・シティのタクシーが黄色であるということは、世界中に知られていると思います。市内を走るこのイエロー・キャブは、他国に比べて格段に低料金で、誰もが広く利用しています。アメリカの他の都市ではタクシーを電話で呼ばなければならないのに対して、ニューヨークでは車のルーフにあるライトが点灯しているかどうかを確認するだけで良いのです。ライトが点灯していればタクシーは空車で、消灯していれば賃走中です。タクシーを捕まえるには、手を挙げて運転手と目を合わせるだけで良く、この動作のことを「ヘイリング・ア・タクシー(タクシーの呼び止め)」と言います。イエロー・キャブは終日運行しており、市内にはタクシー乗り場はありませんが、唯一空港だけにはタクシーが並ぶタクシー乗り場があります。ニューヨーク・シティのすべてのタクシーでは、クレジットカードでの支払が可能で、運転手と乗客を隔てる防弾ガラスが備え付けられていて、武装した強盗が乗車した場合でも運転手を保護できるようになっています。表示料金にはチップは含まれておらず、乗客の裁量で支払うものですが、合衆国ではすべてのサービス業でチップの習慣があり、タクシー業もこの「習慣」に含まれるので、たいていの場合、料金の10~15%をチップとして支払います。市内の道路には、緑色のタクシーが走っていることもあります。これはボロー・タクシーといい、市中央部のマンハッタン地区以外で見られ、マンハッタンから出る際にも利用できます。実際、イエロー・キャブがマンハッタン110丁目以南からバッテリー・パークまでの区間のみを走っていることを知る人は少なく、(客をハーレムまで乗せた後、タクシー運転手が帰途を辿っている場合を除き)ハーレム地区でイエロー・キャブを探すのは難しいでしょう。イエロー・キャブの運転手は、他区にまで出てしまうよりもマンハッタン内を行き来したほうが稼げるので、中には中心街の外への運行を拒否する運転手もいます。近年では、環境保護に努めるグリーンなイエロー・キャブも出てきています。これは緑色のタクシーのことを言っているのではなく、ガスなどの天然燃料を利用して走る環境に優しいタクシーのことを指しているのです。こうした環境に優しいタクシーには、移動中に車内から頭上に広がる街の景色を楽しめるよう、全体が透明のサンルーフが備わっています。
ウォルドルフ・アストリア・ホテル