それは、ゴッホが絵画で描いた教会、並木や民家が実際に残っているニューネンというオランダ地方にある小さな町です。ゴッホの父親が牧師としての仕事のために両親と共にこの北ブラバント州にある農村に家族と移り住みました。ゴッホはここで2年間を過ごし、周りの自然や農民の生活にインスパイアされ多くの作品やスケッチを制作しました。こうした農村でゴッホがどのように暮らしたのか、彼の作品に写っている風景がまだニューネンに残っている、ということが追体験できるという話を聞き、ニューネンに旅立ちました。特に、ニューネンには、ゴッホの記念館「ヴィンセンター」という博物館があり、彼の2年間の滞在が写真、絵画、日記の断片や映像などがあり、大変興味深かったです。「ヴィンセンター」では、オーディオやビデオ上映、話しかける肖像画で、ヴィンセントとその家族、ニューネンで出会って描いた農村民や職工たちについての物語を聞くことができました。ニューネンにある風景がゴッホによる絵画にだんだん変わるインスタレーションも印象的で、再構築されているゴッホのアトリエで彼が使った色彩から、家具や道具まで見られました。ゴッホの物語について読んだり聞いたりして、彼は田舎町に暮らしている農民たちの素朴な生活に惹かれ、農民たちと彼らが暮らしていた田舎町の風景に深いつながりを感じるようになったということが分かりました。
博物館を観終わってから、記念館ヴィンセンターでも「ゴッホが暮らしていた町を歩く」地図をもらうことができ、ニューネンを散歩しながら、自分の目で絵画の風景を見ることができ、さらに面白くなりました。自然に囲まれた古い建築物が沢山残っている魅力的な町だと思いました。そういう穏やかで小さな町を散策する時、突然見たことのある気がする風景を目にしました。驚いたことに、ゴッホの絵に描かれた両親の家、木に囲まれた教会、風車があるのどかな農園やゴッホがアトリエとして使っていた家は変わらずにそのまま残っていました。ニューネンで本物の作品が展示されていなくても、こうした風景をみたら、ゴッホがどのような環境で作品のインスピレーションを得たのか、というイメージができて、絵画の雰囲気を身近く感じることができました。この先ゴッホ美術館に立ち寄る時は、また違う目でゴッホがオランダで描いた少し暗めの絵画を見るようになると思います。