• 2016.02.12
  • ポートランドのヘンテコさを守ろう!
“Keep Portland Weird(ポートランドのヘンテコさを守ろう)”は、賛否両方あるこの街の標語です。
街じゅうの道路標識や公共空間の壁面、バンパーステッカーから建物にまで、この愛すべきフレーズが掲げられています。この標語の元ネタになったのは、数年前にテキサス州の州都オースティンで生まれた“Keep Austin Weird”というスローガンでした。オースティンとポートランドは、どちらもユニークで芸術的な街という点で似たもの同士と言われますが、奇抜さという点においては、ずっと前からポートランドに軍配が上がっています。

“Keep Portland Weird”はすべての住民にとって文字通りの意味が込められた標語であり、個性、ローカルアート、視野の広さ、そして常識にとらわれないライフスタイルを広める手段にもなったのです。
ポートランドがどれぐらい変わっていると認識されているか、この標語にインスパイアされてきっちり数量化しようと試みる記事や討論も盛んになり、この都市の多くの企業が自社商品やウィンドウディスプレイなどを通じて、自分たちの奇抜さを堂々と支援しています。

1_0001 街の標語は様々な場所に掲げられている
1_0002
バンパーステッカーに書かれた街の標語


ポートランドはヒップスター(流行の先端の人々)の街、あるいはヒッピーの街とも呼ばれますが、実際、その両方の顔を持っています。ポートランドの住民は、多様な背景を持つ様々な国の人々が構成する、驚くほど多彩な集合体です。ヒッピー文化の流れを汲む人たちが、この街に無限の可能性に惹かれて移り住んできた(大半はカリフォルニア州から)何年目かぐらいの、時代の先端を行く感性でトレンドを牽引している若きヒップスターの層と、実にうまく共存しているのです。
ポートランドっ子はそのどちらに属していても、それぞれこの街のヘンテコさを謳歌しています。型破りであるということは、変化や革新、人間的な成長へのチャンスをも与えてくれるものだからです。

ユニークでクレイジーな、かつて聞いたこともない仕事のアイディアを持っている人なら、目指すべき場所はポートランドです!
ブードゥー・ドーナツは、深夜になっても店先に行列が絶えない、地域の人気店です。このドーナツショップの名物は、ユニークなメープル・ベーコン・ドーナツと、ブードゥー人形をかたどった生地にジャムのフィリングとチョコレートコーティングを施したブードゥー・ドーナツです。24時間営業のこのお店は、こうした奇抜なドーナツを販売する一方、ダウンタウンのケーキショップ内ではウェディング・サービスも提供しています。

2_0001 ブードゥー・ドーナツは地域の人気店 
2_0002 ブードゥー人形をかたどったドーナツ


ポートランドは、アメリカでも屈指の豪華なミュージアムを持つ街でもあります。その一つ、ベルベッテリア・ミュージアム(Velveteria Museum of Velvet Paintings)では、国内外の画家による独特のベルベット・ペインティングの膨大なコレクションが見られます。ペキュリアリウム(The Freaky-but-true Peculiarium and Museum)は奇抜な展示の複合施設で、ファンキーで面白いインタラクティブ・アートが一同に会しています。ムービー・マッドネス(Movie Madness)のこぢんまりとしたスペースには映画の小道具や思い出の品々が並んでいるかと思えば、もっぱら電気掃除機のみを展示するスタークス・バキューム・ミュージアム(Stark’s Vacuum Museum)というコーナーもあります。  

至る場所で不思議なアート作品やインスタレーションに数多く出会えるポートランドは、街自体が野外ミュージアムのようなもの。例えばホース・プロジェクト(Horse Project)は、ホース・リングに馬のミニチュア模型を繋いで歩道のあちこちに配置したアートです。主な移動手段が馬車であった頃のままの姿をとどめるこのリングは、古き良き時代の思い出として今も受け継がれているのです。

3_0001 歩道に繋がれた馬のフィギュア
3_0002 至る所で目にする奇妙なアート作品


ポートランドでは年間を通じて、文字通り新奇で常識破りのイベントがいくつか開催されます。以前この街の自転車カルチャーについて書いた記事でもご紹介したペダルパルーザ(Pedalpalooza) と(ズーボンブ)Zoobombの他に、毎年8月に行われるクレイジーな大会、PDX アダルト・ソープボックス・ダービー(PDX Adult Soapbox Derby)があります。これはポートランドの南東部、タボール山という死火山のふもとにある森林に覆われた都市公園が舞台の、大人だけが参加できるレースで、各自が最高のスピードと楽しさを求め、自分たちでデザインして組み立てたバイクにまたがり、参加者たちが火花を散らし合うのです。速さ、修理や整備のスキル、創造性の各部門の勝者となった選手が表彰されるほか、凄腕のレーサーの中から観客の投票で選ばれたデアデビル(命知らず)な人気者の発表も行われます。

残念ながら、これらの奇抜な自己表現に対してすべてのオレゴン州民が好意的に受け止めているわけではなく、ポートランドっ子のヘンテコ好きはアーティストとして大成できない若者の言い訳であると指摘する人もいます。確かにポートランドは、まずまず保守的な州の中にある極めてリベラルで進歩的な街であり、その独創的な感覚は、必ずしも万人に歓迎されるものではありません。しかし、懐の深い場所であろうとするポートランドにとってあらゆる人々を受け入れることが街の誇りでもあります。

4_0001 見慣れないペットも、ポートランドでは見慣れた風景の一部

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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