セーラ・ダ・エストレラ地方のメツィオに行ってきました。
モンテムーロという場所にある民芸店に行くのが目的です。
この店では、ハーブやスパイス、かご製品、刺繍、パッチワーク、麻製品など色々とあるのですが、今回私の興味を惹いたのが羊毛製品です。
ポルトガルには、全土に10種類ほどの羊がいます。それぞれ毛質が違うので、出来上がる製品も特徴が異なります。羊毛で出来た製品は昔は良くお土産物屋やローカルショップで見かけることができました。
特に有名だったのが、フィッシャーマンセーターと靴下です。
水に強く暖かい。最近では化学製品に比べて燃えにくいということから、消防士も羊毛のセーターなどを使用しているとのこと。
それがここ最近、羊毛製品を見なくなってしまいました。あっても100%羊毛ではなくなってしまったのです。
細い糸を編むのも大変ですが、羊の毛から糸を作る作業が重労働のため、やる人が少なくなり、食用に殺した羊の毛を燃やすほどだそうです。そして、羊の数も減りました。
ルルドスさんに話を聞きました。
この地域で靴下を編めるのは、30人ほどいるそうです。全てリタイアしている、お年を召した方々。お小遣いを得る感覚で靴下を編んでいるので、食事を作ったり、掃除をしたりする合間に編む程度。最近は、家にいたっきりの老人も増えてきたので、靴下編む人も意外に確保できているそうです。
それでも、羊の毛を洗って、裂いて、紡いだりしてから編むのでハードな作業です。こんな大変な事を昔の女性は当たり前のようにやっていたのですから、驚かされます。
おばあさんたちの持っている道具は、女性代々受け継いできたものらしく、この地域のどの家にも揃っています。ルルドスさんが使う編み針は、銅で出来ており、おばあさんからもらい、そのおばあさんもおばあさんからもらったと言っていたと、話してくれました。
ルルドスさんは、靴下の片方を編むのに(他何もしなければ)一日かかると話してくれました。
羊の毛の色は基本白と黒。なので白い毛糸のボール、黒い毛糸のボール、黒糸は弱いからか、黒と白を一緒に絡ませた白黒(サハブーリョと言います)の毛糸ボールがあり、それらを使って、可愛らしいパターンを編んでいくのです。
「昔は若い子は、一生懸命おしゃれな靴下を編んだものよ。」とルルドスさん。
おしゃれな靴下を履くのがモテる秘訣だったようです。
その頃の男性は、女性のルックスよりも、その子がどれだけ家のことができるかがポイントでした。なので、おしゃれで凝った靴下を履くことが、一種の女性のアピールでした。
長い靴下は夏用です。夏の畑仕事で、草から足を守るために長めになっています。
そして写真のようなレッグウォーマー的なものもあります。これの興味深いところは、ふくらはぎの部分がカーブしているところです。このカーブがある靴下もあったのですが、これは特殊な技術で、現在はこれを編める人が地域に一人だけになってしまったとのことです。
どこの国でも段々、手仕事の技術が減ってきていますが、どうにかこうした良いものは、なくなってほしくないと願うばかりです。