スコットランドの結婚式はイギリスで見られる他の結婚式とは異なります。結婚式は特有の伝統やしきたりにのっとっていますし、スコットランド人は結婚式当日にまつわる迷信を受け継いでいます。
迷信と言えば、スコットランド人の間では、花嫁は結婚式当日に家から結婚式会場に向かう際、右足から歩き始めなければ呪われるとされています。花嫁のブーケに枝付きのホワイトアイビーを忍ばせる伝統は、スコットランドの田舎で広く根付いていて、花嫁の母親は花嫁に気付かれないようにこっそり差し込んでおくことになっています。スコットランドの多くの地域には「ウェディング・スクランブル」という慣習もあります。これは新郎新婦が車に乗り込んで教会を後にするときに、花嫁の父親が一つかみのコインを教会の前にいる子供たちに投げるというもので、新郎新婦に富を運んでくると信じられています(コインを拾う子供たちの財布が膨らむだけではないのです!)。ちょっと時代遅れな伝統としては、かつてダンディー地区には結婚式の前に花嫁の足を洗う儀式があり、幸運をもたらすとされていました。花嫁がスツールなどに腰掛けて年上の既婚女性に足を洗い、拭いてもらうというものですが、一握りの度胸ある花嫁たちはこの地域の風習を忠実に受け入れ、なんと満杯に水を張ったたらいに座り、縁から足を出して油や灰、すすを塗ってもらったそうです。
伝統的なスコットランドの結婚式では、花婿は必ずキルトとタータンを織り上げたショールを、花嫁はたいていタータンを織り上げたショールかスカーフを着用します。また、花婿付添人や他の男性招待客がキルトを着用することも珍しくありません。キルトはスコットランドを象徴する男性の正装ですからね。
結婚式にキルトを着用した男性達
ウェディングウォークは新郎新婦と招待客が教会へ向かう公の行進です。バグパイプかバイオリンの奏者が先頭で、通常、花婿は花嫁付添人と並んで歩き、花婿付添人を従えた花嫁がこれに続きます。結婚式が終わり、新郎新婦が教会を後にする際は、花婿付添人が花嫁付添人の腕を取ってエスコートしながら後に続きます。迷信に基づく伝統的儀式では、結婚式の行列は2つの川を渡るか、1つの川を2回渡ることで幸運がもたらされるとされてきました。「ペニーウェディング」は伝統的な結婚式を手ごろな価格で行いたい人にとって理想的な代替手段です。この結婚式では招待客が食事や飲み物を会場に持参し、新郎新婦がウェディングケーキと披露宴の場所を手配します。これは素晴らしいアイデアだと思います。持ち寄りパーティーのような結婚式で、すべての招待客が持参した食べ物を新郎新婦にふるまい、お祝いするのです。「愛の杯」と呼ばれるスコットランドの酒杯には取っ手が2つ付いています。この銀製の杯にはウイスキーがなみなみと注がれ、伝統的には花嫁が最初に口を付け、その後、披露宴会場全体に回されることになっています。リールはスコットランド北東部の漁業地域の代表的な伝統舞踊です。参加するのは村中の夫婦と新郎新婦で、港を出発点にし、楽隊の生演奏に合わせて踊りながら徒歩で村を回ります。夫婦たちは自宅の前まで来るとそれぞれ踊りの列から離れていき、新郎新婦だけが最後まで踊り続けます。伝統行事みたいなものですが、どう考えても小さな村でなければ実施できませんよね!「伝統的なグランドマーチ」は披露宴で最初に行われることの多いダンスで、まず新郎新婦がバグパイプまたはオーケストラの生演奏に合わせて行進します。新郎新婦がダンスを始めると、その後ろに花嫁付添人と花婿付添人、続いて新郎新婦の両親、最後にそれ以外の招待客全員が踊りの輪に加わります。この慣習は今でもよく行われていて、私が出席したスコットランドの結婚式でも必ず目にしましたよ。ところで、当然のことながら、結婚式には贈り物が欠かせません!伝統的には、花嫁は花婿が結婚式当日に着るシャツを、花婿はウェディングドレスを贈り合うことになっています。男性はいつだって損な役回りですよね!スコットランド北東部では伝統的に、花婿付添人が花嫁には茶器一式、花婿には腕時計を結婚祝として贈ります。「ラッケンブース」は結婚式当日に花嫁が身につけるブローチで、ロマンチックな愛の証として花婿から花嫁に贈られます。ラッケンブースはたいてい銀製で、重なり合った2つのハートがかたどられています。
ラッケンブース