今回は、最も支援を必要としているものの「お返し」をすることが困難な人たち、すなわちホームレスを支援するためにコミュニティーのメンバーが行っている取り組みについて紹介したいと思います。
アメリカではホームレスが増加傾向にあります。そのためか、正式な名称はわからないのですが、消費期限が迫っている食品や家に余っている食材を箱や仮設の「食品スポット」に入れておくという新しいコミュニティー活動が、住宅地を主とした市内のあちこちで見られるようになりました。
これもいわゆる「分かち合う文化」のひとつですね。
ですが、私はこの活動については複雑な気持ちを抱いています。善意に基づき、大義のために行われている活動なのは明らかですが、個人的に食品を道端に置いておくというのはいかがなものかと感じるのです。密封したプラスチックケースに入った食品が何日も放置されているのを見かけたこともあります。ほとんどが冷蔵庫で保管する必要がない食品ですが、日光やテキサスの高い気温ではどうしても傷んでしまいます。また、ケースが壊されたり、アライグマなどの野生動物によって引っ掻き回されたりする可能性もあります。素晴らしいアイデアだとは思うのですが、地元のシェルターに持って行くなど、別の方法をとる方が良いように思います。
ホームレスに温かい食事を配布するNGO(非政府組織)もあります。地元の人たちが運営しているコミュニティーセンターや個人が料理を作り、地域の恵まれない人々に提供することも珍しくありません。
他にも、一部の地域ではフードドライブもよく開催されています。フードドライブとは、家庭にある余分な食品を集め、食料品を購入することができない人々に再配布するという取り組みです。
数か月前には、ホームレス問題への関心を高めるための「野宿イベント」も開催されました。市内の公園に集まった参加者は、段ボールと毛布だけを頼りに、屋外で一夜を過ごすとはどういうことかを、最低限とは言え体験したのです。
このイベントでは、恵まれない人のためのテントの購入費や宿泊費に充てるための募金活動も行われていました。
その他にも、夕食や一杯飲みに行った時に一食分または一杯分のお金を誰かのために先に支払っておく、ペイフォワード(Pay It Forward,Pending Mealとも呼ばれる)という活動もあります。強制ではないので、店に行ったら必ずしなければならないというわけではありませんが、レジで一食分または一部を、誰かのために先払いすることができます。
この活動の基本となる考え方は、支援を必要としている人のために食事代を払うことに留まらず、強い連帯感のあるネットワークを作ることにあります。
寄付された食事やお金は社会福祉事業に提供されて、経済的な問題を抱える家庭にクーポン券の形で配布されます。どの家庭に配布するかは、そうした家庭と密に接するソーシャルワーカーが判断します。
よく友だちからアメリカの福祉制度について尋ねられることがあります。アメリカ政府は収入がない、または少ない人に多少の金銭やフードスタンプ(食品購入用のクーポン)を提供していますが、困っている人への支援に最も大きな力となるのはコミュニティー、すなわちそこに暮らす人々です。ほとんどのアメリカ人はこの問題にとても心を痛めています。残念なことに、パンデミック以降、そしてこの経済危機においてこの問題は悪化する一方なので、コミュニティーでの支援活動が大きな助けとなっているのです。
ホームレスへ配布する食品が並ぶ屋台