マイバウムはドイツ語で「五月(Mai)の木(Baum)」という意味で、メイデーの前日4月30日に市町村の中心広場に飾られます。毎年新しい木を用意するところもあれば、毎年同じ柱を使うところもあります。
もみの木の大きな冠を吊り下げたり、沢山の表札のようなものを飾るなど、地方によってマイバウムのスタイルが異なります。私の住むところでは10mほどの背の高い白樺の木に紙の装飾が施され、地元の人たちが下から長い棒でマイバウムを支え、時にはクレーンを使ってみんなで力を合わせながら立ち上げるという、見応えのあるイベントの一つとなっています。垂直に立つようみんなで声をかけあげ、根元に留め木を差し込んで大きな木を安定させるのも熟練の技です。
また、最近では4月30日夜にTanz in den Mai(タンツ・イン・デン・マイ:踊って5月を迎えよう!)というダンスパーティが主流です。ドイツのミュージックはとても踊りやすいものが多く、レストランやバーでドイツ人は陽気に踊りながら5月に突入します。
起源は4月30日の日没〜5月1日未明、ヴァルプルギスの夜(独: Walpurgisnacht)または魔女の夜(Hexennacht)という言い伝えがあり、魔女たちがHarz(ハァツ地方)にあるブロッケン山で大規模なお祭りをして、春の到来を心待ちにするというものでした。中央ヨーロッパ、特に北欧ではたき火をして冬を追い払う風習が残っています。
ドイツのミュンヘンと日本の北海道が同じ緯度にあるため、4月になっても気候は不安定で早朝0度近くまで気温が下がったり、5月に雪やひょうが降ったりすることが多々あります。ですから、ドイツでは5月になり本格的に暖かい気候になることを祝うMaifest(マイフェスト)はかかせない行事なのです。そして皮肉なことに、メーデーは国際的な労働祭(Tag der Arbeit)でもあります。夏の訪れを祝う一方、労働者が待遇や社会地位の向上を求めてデモンストレーションをするというので、なかなか複雑な一日となります。日本でも5月はゴールデンウィーク。日本では「鯉のぼり」が空に舞うように、ドイツでは大きな雄大なマイバウム、家の軒先に小さなマイバウムが至る所に見られ、春の空に微笑みかけています。