[caption id="attachment_339" align="alignnone" width="300"] 写真1:今年のセルバンテス賞授賞式にて。フィリップ6世国王、レティシア王妃(サン・ジョルディの日にちなんでかバラ色のお召し物)と受賞者のゴイティソロ氏。[/caption]
[caption id="attachment_336" align="alignnone" width="300"] 写真2:全書籍10%値下げの書店[/caption]
毎年、スペイン中の書店では、店の前に仮設屋台を置いたり、全書籍10%引きセールをしたりして「本の日」を祝います。国王陛下ご夫妻ご臨席の下で行われる、スペインで最も権威のある文学賞「セルバンテス賞」の授与式や、セルバンテスの代表作である長編小説「ドン・キホーテ」*1を丸2日間かけて読み通すリレー朗読会など、本や読書に関する数多くのイベントも全国で開催されます。
[caption id="attachment_337" align="alignnone" width="255"] 写真3:ルーブル美術館 ラファエロ作「サン・ジョルジュ」とドラゴン[/caption]
「本の日」は、より多くの人々に読書の楽しみを知ってもらおうと、20世紀初頭に、バルセロナ書店組合が企画したそうです。1926年以降、セルバンテスの誕生日とされる10月7日*2に開催されていました。1930年からは、文豪二人の命日である4月23日*3に変更され、同日のお祭り「サン・ジョルディの日」と統合されました。
サン・ジョルディ*4とはスペインの北西部にあるカタルーニャ州の守護聖人です。言い伝えによると、囚われていたお姫様を救い出すために、この聖人がドラゴンを槍で退治しました。その時ドラゴンから流れ落ちた血の痕から赤いバラが咲き、その中の一本を取って愛と忠誠の証としてお姫様に捧げたそうです。「サン・ジョルディの日」はこの聖人が殉教した日です。この日、中世バルセロナでは、馬上槍試合が行われ、参加する騎士は思いを寄せる貴婦人にバラの花を贈ったのだとか。
今や、カタルーニャ民族の伝統的お祭り「サン・ジョルディの日」であり、バルセロナの本屋さんによる販売促進企画「本の日」である4月23日。恋人同士がバラと本を贈り合う日となりました。恋人へのプレゼントと言えば、日本では、2月14日「バレンタインデー」ですね。こちらは、昭和初期、神戸のチョコレート屋さんが企画したとの説があります。
1930年に地中海の港町バルセロナでロマンと知性溢れる記念日が、1932年に瀬戸内海の港町神戸で日本初のバレンタインチョコレートが、それぞれ誕生しました。奇しくもと言うか当然のごとく、バルセロナと神戸は1993年にめでたく姉妹都市になりました。
[caption id="attachment_375" align="alignnone" width="300"] 写真4:マドリードでも本とバラ[/caption]
[caption id="attachment_374" align="alignnone" width="300"] 写真5:バルセロナの賑わい[/caption]
余談ですが、世界遺産であるサグラダ・ファミリア教会建設をガウディに依頼した当初の施主は、やはりバルセロナの本屋さん、カトリック関係書籍出版業者として敬虔な信者のボカべージャ(Bocabella)氏でした。もし彼がいなかったら、現在のサグラダ・ファミリア教会も存在していなかったでしょう。いずれも、先進性を好むカタルーニャ気質の一端を表していますね。
<註>
*1. 「ドン・キホーテ」-「既成概念にとらわれず理想を追求する男」の物語
*2. 10月7日-10月9日に洗礼を受けたとの記録に基づき、その2日前を誕生日と類推されたも の。確証はないが、9月29日を誕生日とする説もある。
*3. 4月23日-当時、スペインはグレゴリオ暦、イギリスはユリウス暦のため、正確には同じ日で はない。
*4. サン・ジョルディ-イングランドでは聖ジョージと呼ばれ、4月23日は国全体で祝う。