• 2021.06.21
  • アンダルシアの揚げ物
 スペインでは昨年10月25日の非常警戒体制再延長発令から半年以上経ってようやく5月9日に解除の運びとなり、国内旅行の規制もなくなりました。私自身もComirnaty(ファイザー・ビオンテック)ワクチンの2回目接種終了後2週間以上過ぎ英国株はもとよりインド変異株に対しても感染・発症・重症化予防効果があると勝手に信じて一年半ぶりに個人的GoToトラベルお泊り旅行を決行してきました。行先は今までこの特派員報告で何度がご紹介した南スペインはアンダルシア州、大西洋に面するカディス県の港町 El Puerto de Santa María です。

2018年6月14日『コルドバ人のカタツムリ愛』でご紹介したカタツムリ。この町で期間限定カタツムリ売りおじさんに遭遇しました。たくさん積んである白っぽいのがカラコレス(theba pisana)2kgで5ユーロ(約625円)、右手前の箱に入っている大きめのカブリージャス(otala lactea)は1kgで4ユーロ(約500円)、後方左手の箱の中に入っているウイキョウやスペアミントなど調理に必要な香草はおまけでつけてくれます。


カタツムリ販売スタンド。網に入っている緑はミントの葉です。


カタツムリ澄まし汁仕立て。蜆汁で蜆の身を食べない人がいるようにこの汁だけのファンもいるとか。

2015年5月28日『マグロ村のマグロ祭り』でご報告のスペインマグロ。日本でブランドマグロといえば青森県大間産または和歌山産近大クロマグロ、スペインではカディス県のバルバーテ(Barbate)産が断トツ特選ブランドです。こちらの表示には“ATÚN ROJO FRESCO ALMADRABA DE BARBATE Por 34´98 €/Kg” ”バルバーテ定置網の生赤マグロ キロ当たり34´98 €”とあります。日本円で約4375円ですね。思わず1kg余りをブロックで購入、赤身、中トロ、など切り分けてこうなりました。スペイン語でatún rojo 赤マグロといっていますが日本語では大西洋黒マグロです。


なんとも中途半端な解体ショー状態のマグロ販売店。


宿で切り分けた本マグロ3種盛り、これで250g位でしょうか?大根とキュウリは現地調達、醤油と割り箸、チューブわさびは旅行必携アイテムです。

 そしてもう一つアンダルシア料理を語る上で欠かせないのが揚げ物です。19世紀フランスの作家プロスペル・メリメが書いた小説『カルメン』はのちにオペラにもなって日本でもそのメロディーは誰でも一度は聞いたことがあると思います。このアンダルシアが舞台の小説で主人公のジプシー女(*)カルメンがバスク男ドン・ホセとの逢引の場所に選んだのはセビリアのトゥリアナ地区の揚げ物で有名な居酒屋でした。
(*)メリメはGitanaと記しています。

— Pays, quand on aime la bonne friture, on en va manger à Triana, chez Lillas Pastia.
『同郷のお兄さん、美味しい揚げ物が好きならトゥリアナ地区のリージャス・パスティア亭がお勧めよ』とドン・ホセに逢引を促しています。メリメがこの作品を書いた19世紀半ばで既にアンダルシアの揚げ物の評判は美食の街パリにまで届いていたことでしょう。

ちなみにこの『同郷のお兄さん・・・』というセリフはドン・ホセの出身地がナバラ県のElizondo村で、カルメンはご近所のEtxalar村出身という設定になっているからです。それにしてもスペインの北の端ご出身の二人が1000㎞余りも離れた南のアンダルシアで色恋沙汰とは、下北半島で生まれた隣村同士が大阪で出会ったような話ですね。

現在でもアンダルシアの町々にはfreiduríaと呼ばれる揚げ物屋があって日本の商店街にある惣菜屋さんの店先で揚げたての鶏唐、コロッケ、メンチ、串揚げ、ポテトフライ、トンカツ、などがいい匂いを放っている体で主に海産物、たとえば片口鰯、イカ、エビ各種、白身魚、鱈子などに小麦粉やひよこ豆粉(ガルバンソ豆粉)等をまぶしてオリーブ油で揚げたものが店頭に並びます。この揚げ物屋さん、飲み物も提供する食堂形式の店舗もありスナック感覚のファスト・フード店もしくは天ぷら居酒屋とも言えそうです。


こちらは100gから注文できる揚げ物4種盛り、コウイカ、片口鰯、シュリンプ、メルルーサ。

またご当地限定のユニークな揚げ物は此処カディス湾特産のカマロネスと呼ばれる小エビ、形態としてはオキアミに似ているこのエビがまだピチピチ跳ねている状態で小麦粉やひよこ豆粉、玉ねぎのみじん切り、パセリ、水と混ぜ合わせて平たく揚げたのがtortilla de camarones 小エビのかき揚げです。以前、富山駅前でいただいた白エビの唐揚げとか、立ち食いソバ屋さんの“駿河湾産桜エビ入りかき揚天蕎麦”を思い出しました。


カタツムリ屋さんの隣で出店していた生きカマロネス販売スタンド、コップ一杯で2.5ユーロ(300円少々)です。


こちらが小エビかき揚げの出来上がり。

揚げ物ついでに地元民が愛してやまないチューロス、この港町の市場で65年間揚げ続けいまだ現役のチャロおば様。コロナ対策のアクリル板とマスクでお顔がはっきりしないので、以前の写真もお借りしました。スペイン独裁時代の国家元首フランコ総統が1967年にこの町を訪れた際に当時24歳のチャロさんがチューロスを献上なさったとかの昔話をして頂きました。


現在のチャロさん。


12年前のチャロさん

ここからは前回の記事『リリア宮殿』の補足です。
先日5月22日リリア宮殿にて現当主アルバ公爵の次男Carlos Arturo José María Fitz-James Stuart y Solísオソルノ伯爵(29歳)の結婚式が挙げられました。新婦はBelén Corsini de Lacalle(31)さん。このご時世200人と限られた招待客で慎ましくお宅の裏庭でとり行われました。


裏庭での挙式。Casa de Alba fotos oficiales

慎ましいとは言え新郎の祖母にあたる先代のアルバ公(女性)との親交が厚かった、現国王フェリペ6世陛下の母君ソフィア上皇后陛下のご臨席も賜っての結婚の儀でした。


新婦の横にはソフィア上皇后陛下。Casa de Alba fotos oficiales

 因みにこのアルバ家の家系は現王室よりも古く、スペインで国王陛下からお召しがあった際に『恐縮に存じますが参上ご辞退させていただきます。』と欠席することが許される唯一の家柄だそうです。またバチカンのサン・ピエトロ大聖堂、ロンドンのセント・ポール大聖堂に次ぐキリスト教世界で三番目に大きくスペインでは最大のセビリア主教座聖堂に参拝する際に、アルバ公だけはもしそれがご希望でしたら乗馬したままで入ることができるそうです。


自宅の裏庭を散歩する新婚カップルです。末永くお幸せに! Casa de Alba fotos oficiales

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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