• 2023.05.17
  • ピカソ没後50年
1973年4月8日、スペインが生んだ天才画家パブロ・ピカソが亡くなりました。その50回忌を機に様々な追悼イベントが世界中で開催されています。スペインでは生地マラガに没後30年記念として2003年に開館したピカソ美術館の中庭から命日の4月8日の朝まだき、ピカソがこよなく愛した平和の象徴でもある鳩が放たれました。いまだに続くロシアによるウクライナ侵略戦争終結の祈りも込められていると思います。


写真1

写真1.命日の早朝、マラガにあるピカソ美術館の中庭から飛び立つ鳩です。

ピカソが幼少時代から晩年に至るまで生涯描き続けた鳩との関わりについては2016年3月1日当コラムで公開された拙文『ピカソと鳩』をご参照頂けたら幸いです。

https://kc-i.jp/activity/kwn/yamada_s/20160301/

いまさらながらですが、ピカソの偉業は多くの芸術家に多大な影響を与えたのみならず、平和を希求するメッセージに鳩を使うなどして政治の世界においても多くの貢献をしています。そして、ビジネスやIT産業の世界にもその影響力は及んでいます。例えばもしもピカソが存在しなかったとしたならiPhoneやiPad、iMacコンピュータも現在のような形では存在しなかったかもしれません。



写真2

写真2.はピカソが1945年の暮れから描き始め約一か月半で仕上げた11枚の雄牛の石版画の連作です。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブス氏は2008年にアップル大学と呼ばれる社内教育プログラムを立ち上げ、その教材の一つとしてこの連作を採用しました。 彼の信条である“余分なものはすべてそぎ落とす”の好例としたのです。

この考え方は奇しくもフランスの飛行家で小説家のサン・テクジュペリの言葉と呼応します。“完璧とはそれ以上足すものが無くなった時ではなく、それ以上引くものが無くなった時に達成されるものです。
“La perfection est atteinte, non pas lorsqu'il n'y a plus rien à ajouter, mais lorsqu'il n'y a plus rien à retirer.”


2014年8月10日ニューヨーク・タイムズ紙日曜版に“Simplifying the Bull: How Picasso Helps to Teach Apple’s Style” “雄牛を単純化する:ピカソ作品がどのようにしてアップル・スタイルを教えるのに役立つか”という記事が掲載されました。その記事はこのように始まっています、”アップル社は地球上で唯一自社をピカソと敢えて比べるハイテク企業かもしれない“。”Apple may well be the only tech company on the planet that would dare compare itself to Picasso.“


写真3

写真3.はiMacコンピュータでこの単純化の考えが実践された姿を現しています。

ついでながら現在大阪中之島の国立国際美術館にて5月21日まで開催されている特別展『 ピカソとその時代・ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』ではピカソの初期から晩年までの作品35点を中心として同時代のクレー、マティス、ジャコメッティ、他の作品を鑑賞できます。 余分なものは削ぎ落して本質だけを追求するという観点から見るとクレーやマティス、ジャコメッティにも共通点があるような気がしますね。

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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