• 2016.11.08
  • 90歳でも立派な現役はだぁれ?
ミラノの象徴的建造物又は文化財と言えば、ドゥオモと、ダ ヴィンチの傑作の一つである最後の晩餐でしょう。この二つの歴史的建造物と 文化財の価値に負けていないものが、ミラノにはもう一つあります。それは旧型のトラムです。

ヨーロッパのどの国でも近代化が著しく進んでいますが、その中でトラムの近代化も例外ではありません。乗車口に段差の無い低床車体、連結が可能な連接車体、寒冷に対応出来る冷暖房機能付きの車体などの開発が盛んに行われました。それなのに、ミラノには目を疑うようなとびきり古い型のトラムが未だに走っているのです。しかも何十台も!

日本に並ぶ長寿大国のイタリア。ミラノにもお年寄り達が沢山住んでいます。90年前に作られたこの旧型トラムは、 もしかするとトラムと同い年の高齢者達を運んでミラノを回っています。ときに、杖をついて腰が伸びなくなったような高齢者が乗降車の激しい段を億劫そうにゆーっくりと上り下りする光景を乗る度に見た記憶が、、、そしてそのお年寄りがやっとトラムによじ上り、運転手も辛抱強く待った光景とはうらはらの場面が展開されるのです。発車すると乗客はトラムに勢いよく揺さぶられます。でもミラネーゼ達はさすが!誰も、それこそお年寄りでさえも揺さぶられて転がったりはしません。1秒差のタイミングでみんな捉まるべき所に捉まっているのです。トラムはガタガタ、ゴトゴト、キィーと大きな騒音をたてて発車後も縦横に激しく揺れながら走行を続けます。

トラムは、最初は電動ではなくて馬が引いていたそうです。その後、蒸気式の時代を経て、電動式に至りました。知らないミラネーゼもいるそうですが、トラムが霊柩車のように葬儀場まで亡骸を運んだりした時期もあったり、戦争中には負傷者を座席に横たわらせて、救急車の役割も果たしたそうです。救急車と言っても、あまり急げない上に激しい振動に加えカーブでは座席から揺さぶり落ちたりして、たいして救ってもらえない救急車だったかもしれません、、、
余談になりますが、海を隔てたサンフランシスコではイタリアから買いとった158台の旧型トラムを 見られるそうですよ。

今日ミラノは交通量の多い町になりトラムはしばしば違法駐車の自動車に行く手を遮られたり、トラムの線路と乗用車の道路が複雑に交差している場所などではマナーの悪い乗用車の運転手に行き先をはばかられたりと、トラムの運転手とはなんとストレスの多そうな職業なのでしょう。しかもトラムのクラクションは、運転手がペダルを踏んで鳴らすのですが可愛らしい(?)鐘の音。騒音が多い今の世の中では、威嚇性に欠けるこのトラムのクラクションは鳴らしても鳴らしても無視をされ続け、それをいじらしく思うのは私だけでしょうか、、、

この旧型トラムには、ミラノの町内を回りながら食事が出来る素敵なレストランに大改造と大変身をしたものもあるんですよ。振動でお皿やグラスが動き出したりしないのか、落ち着いて食事が楽しめるのか興味津々です。一度、試してみたいです。

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特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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