公園のある一画には 木製テーブルとベンチが据え付けてあって、ある土曜日、お父さんが小学生らしき息子さんのために誕生パーティーの準備をしている所に出くわしたことがありました。
そのテーブルとベンチの一画を予約して確保しておける訳でも無い公園ですから、きっとお父さんは早めに起きて、前日に準備しておいたパーティーグッズやお菓子などを詰めた袋を掴んで、息子さんとあのテーブルを目指して息急き切って来たに違いありません。
木の枝に、「BUON COMPLEANNO(お誕生日おめでとう)」とプリントされたデコレーションを結びつけて飾りつけしたり、ポテトチップスやポップコーンなどをカラフルなお皿に盛りつけたりしてこの親子はせっせと準備に励んでいました。
帰りがけにまた同じ場所を通ると、招かれた親子たちが続々と集まって来ていて、壁も扉も見えないそのパーティー会場のドアをノックして、私も参加したくなるくらい楽しそうにしていました。
さて、ミラノには大小合わせて沢山の公園がありますが、どの公園も老若男女に万遍なく利用されています。私の場合、仕事先が公園だった時期もありました。その公園の真ん中には、Palazzina Liberty(リバティー様式小邸宅)と呼ばれるとても素敵なコンサート会場があるので演奏家の私には縁の深い場所となったのです。そのコンサート会場は、1900年代始めの頃にもともと野菜市場があった所のカフェレストランで、商人たちが商談を繰り広げていた場所だったそうです。
ファシズムの時代の建築が数多く残るミラノの町。わかりやすい例ではミラノ中央駅、裁判所、高級フードマーケットEatalyに改造された劇場などなどがそのファシズム時代独特の威厳さで存在感をアピールするその傍で、Libertyリバティー様式と呼ばれたアール・ヌーヴォー調が発達し、その建築は上品にひっそりと生き延びて時代を継いで行っているように感じられます。
余談ですが、この会場でのコンサートのために公園の入り口に来た時に、同僚が困った表情で立ち尽くしていました。どうしたのかと尋ねてみると、犬が怖いので公園に入って行けないでいる、と言うのです。
よくよくみると、確かに犬だらけ。その公園には、柵に囲まれた区画に放し飼いになっている犬が沢山いるどころか、 飼い主から解き放されて公園に飛び込んでいく犬までいます。
公園の真ん中に位置するコンサート会場には、 公園の中を歩いて通って行くしか方法がありません。脅えて立ちすくんでいる彼女と一緒に困ってしまった私。これではコンサートに遅刻してしまいます。
苦肉の策、彼女に目をつぶらせて私が彼女の手を引いて(引きずって!)なんとか会場までたどり着きました。
さて、街中を歩いているだけでは見つけられないリバティー様式もあります。
Osteria del Treno(電車の居酒屋)は、その当時の鉄道員が仕事が終わった後に立ち寄って仲間と一杯飲んで、1日の労働をねぎらった場所であったそうですが、その説明から私が想像する居酒屋は、鉄道員達の煤汚れた格好が見えないくらいに灯りを控えたダークな雰囲気な場所。ところがどっこい今では、その当時の様子をどうにもこうにも想像出来ないくらい洗練されていて、タンゴ ショーなど華やかにが行われるソーシャル的なレストランとなっているので、それも驚きです。
ミラノはリバティー様式が発達した都市でもあったので、他にもリバティー様式が残っている場所があるに違いありません。更なるリバティー様式を見つけるのが楽しみです。