はい、それはミラノ市内にあると言っても過言では無い所に位置するリナーテ空港, もしくはミラノから50キロ離れた所にある、より大きな空港のマルペンサ空港。
マルペンサ空港を利用するにあたって、ちょっと怯んでしまう事があります。マルペンサを直訳するとマイナス思考とか否定的な考え方などといった意味。そんな意味合いの名前なので、これで本当に無事な旅が出来るのかと不安な気持ちにさせられる飛行場。しかもイタリア国内の飛行場の殆どが、歴史的重要人物の名前が付けられていて、それぞれの飛行場が重要性をアピールしています。一方、カッシーナ マルペンサという名前の広大な酪農地から発展していって飛行場となり、農家の名前をそのままキープしたのがマルペンサ空港。ミラノはイタリアの商業都市ナンバーワンで、それこそミラノファッションも開催されるような何でも先端を行く町のはずなのに、この由来といい意味合いといい、ちょっと格好悪いなぁ、、、
それはともかく、この農家の広大敷地を使って、実業家で航空技術者であるカプローニ氏が航空開発事業の実験を始めた事が、現在のマルペンサ空港に繋がるのでした。
カプローニ氏の実験記録を読んでいると、ダ ヴィンチを何となく思い出します。と言うのは、天才ダ ヴィンチが考え出した案を実現するにあたって、何人の怪我人や死者を出してしまったであろうか、とか彼の業績とそれに伴った報いについて時々考えさせられるのですが、どうやらカプローニ氏もダ ヴィンチごとく天才肌らしく、様々な試作機を生み出しては実験し、時には死者を出す寸前の事態を起こしたり、彼が開発した旅客機の一機が墜落して乗員全員が死亡という惨事も起きたとかで、尊敬と恐れが入り混じった微妙な気持ちになるからです。
ええ、ご心配なく、マルペンサ空港の名前とこの由来のせいで、不吉な風雲があるわけではなくて、私もマルペンサ空港を利用して毎回無事に旅を終えていますよ。
ところで、10年ほど前に公開された映画、ターミナルを覚えていらっしゃいますか?スピルバーグ監督でトムハンクス主演の飛行場に停留せざるを得ない事情が起きて、飛行場で暮らすことになったポーランド人を描いたストーリー。
実はマルペンサ空港にも、似たような境遇の女性が住んでいるのだそう。北部イタリア人のこの女性は、息子たちが住んでいるモーリシャスに滞在している時に、何らかの理由でパスポートを取り上げられモーリシャスから追放され、マルペンサ空港行きの飛行機に乗せられてイタリアに戻ってきました。それゆえに空港から出られない境遇で、信じられないことに約25年も経つのだとか!
この女性の事が最後にニュースに取り上げられたのが2019年頃で、現在も空港に住んでいるかはわかりません。映画はハッピーエンドでしたけれど、彼女の場合、25年と言う年月の重み自体がハッピーエンドからは程遠いのでした。