• 2022.12.23
  • プレゼーぺ
今年もクリスマスシーズンがやってきました。もしミラノへ行くとして、でも一体どれくらいクリスマスの雰囲気が楽しめる所なのだろうか、と思われる人もきっと多い事でしょう。


高級ブティック街や繁華街は、それぞれにアピール性や工夫を凝らしたクリスマス イルミネーションやデコレーションを飾り、2つの運河の水面に反映されてチラチラと輝くイルミネーションは、シンプルにもかかわらず運河の美しさを存分に引き出していて、ミラノ市と自治体がクリスマス イルミネーションにはかなりの力を注いでいるのが伺えます。


それだけではなく毎年恒例でドゥオモ広場に巨大クリスマスツリーが設置され、10万個近くのLEDやデコレーションで飾り付け、ミラノの夜を輝かせます。その横のガレリアには、スワロフスキーがスポンサーのクリスマスツリーも設置されます。スワロフスキーのクリスタルがふんだんに使われ、その輝きがLEDライトで更に輝きを倍増させ、華やかなガレリアを更に華やかに仕上げ、見応えたっぷり。

実の所、クリスマスツリーはイタリアではメインなクリスマスデコレーションではなかったのです。カトリック教徒の国なので、プレゼーぺ(又はプレゼピオ)が最もポピュラーな飾りつけでした。プレゼーぺとは、イエス キリストが誕生するシーンを再現したミニチュア。


ミニチュアといえども、その歴史を遡るとプレゼーぺを始めたのは13世紀の聖人 聖フランチェスコ。文字を読むことを知らない故に聖書を読んだことが無い人たちにもわかりやすく諭すために、ロウで作った人物や動物を並べてキリスト誕生シーンを再現して、福音書の説明をしたことが始まり。

この方法が受け継がれてゆき、発展を遂げ、プレゼーぺ生産は立派なビジネスとさえなりました。特にナポリでは職人の手によるプレゼーぺ工芸品が発達して、見てしまったら最後、買わずにはいられない出来栄えの物ばかり。毎回ナポリを訪れる度に少しずつパーツを買い込んで、自宅でも見応えのあるプレゼーぺに仕上げていく人も少なくありません。

イエス キリストが馬小屋で生まれた説と洞窟で生まれた説と二通りあるので、どちらのバージョンでも上手く仕上がるようにと、背景が微妙なニュアンスで出来ている所も面白い点。

プレゼーぺを満足のいくような状態に仕上げた後は、キリストのパーツが置かれる所は空にしておいて、クリスマスの朝が来てからキリスト誕生ということで赤ん坊を加えたりするようです。

ところで、19世紀前半に史上最高のイタリア人バイオリニスト、ニコロ パガニーニが活躍しましたが、悪魔に魂を売って超絶技巧を手に入れたに違いない、と言われるほどの鮮やかな奏法の持ち主でありました。パガニーニは、そんな評判を逆手に取ったのでしょう、演奏時に足元に煙を炊かせたりして、まるで体が中を浮いているかに見えるように神秘的な演出をしていたそうです。
教会、お店のショーウィンドー、レストラン、街角など、至る所に様々なプレゼーぺが見られるこの時期のイタリア、おすすめですよ。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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